2022 Fiscal Year Research-status Report
戦時下の婦人雑誌メディアとその連載小説における「言説」形成の研究
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20K12935
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
古矢 篤史 摂南大学, 国際学部, 講師 (90747966)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / メディア史 / 横光利一 / 婦人雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、前年度に引き続き、戦時下の婦人雑誌における言説の検証と、そのなかの連載小説の位置付けの論考を行なった。まず、前年度に研究報告を行なった横光利一の婦人雑誌連載小説「春園」について、その後もさらなる調査と検証を進め、査読付論文「婦人雑誌における「銃後」言説形成と連載小説――日中戦争開戦期の『主婦之友』と横光利一「春園」――」(『関西近代文学』創刊号、日本近代文学会関西支部、2023年3月)にまとめて発表した。一般女性に人気が高く多大な発行部数を記録していた『主婦之友』を対象とし、戦時下にどのような言説やイデオロギーが女性読者に展開されたかを検証した結果、「銃後」と呼ばれる言説にジェンダー規範の変容と、それを文学が後援した痕跡を明らかにすることができた。そして、横光の連載小説が、そのような言説と関わり合いながら成立していることを論じた。この調査により、主として日中戦争開戦直後の文学場の状況を、婦人雑誌というメディアを通じて新しい視座から捉えることに成功したと判断する。次に、アジア・太平洋戦争開戦前後の婦人雑誌と連載小説の検証に移った。具体的な調査対象は、教養系の婦人雑誌『婦人公論』と横光利一の同雑誌連載小説「鶏園」である。大政翼賛会発足後の翼賛体制下において婦人雑誌が構築していった言説の実態、とくに女性の役割(ジェンダー)の変質を歴史的・メディア史的に辿りながら、小説に描かれる女性の表象がそのような時局の言説とどのように関わっていくのかを検証した。これらをまとめた論文は2023年度に発表する。また、その他の婦人雑誌連載小説に関する研究(横光利一の長篇小説「盛装」等)も進んでおり、本研究課題のなかで作成した調査資料についてもまとまってきたため、これらも併せて2023年度に公表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要な研究調査はおおよそ終了した。収集した文献の整理を行いながら、論文や研究ノートの公表が残る課題である。2023年度中にその投稿も終える見込みのため「おおむね順調」と評価する。なお、本研究課題は、ほぼ全期間を通じて新型コロナウィルスの影響を受けて当初予定していた出張調査に多大な支障が出たが、最低限の文献購入や遠隔複写などの代替手段を通じてすでに2本の査読付論文を公表できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は前項記載のとおり、論文や研究ノートの公表に専念する。補助的な文献は収集するが、すでに資料や論考はまとまっているため論文作成を順次進める準備は整っており、またすでに進んでいる。
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Causes of Carryover |
全研究期間を通じて新型コロナウィルスの影響で調査や会合のための出張が制限されたことによる差額である。文献収集による調査を中心に行ったことにより、当初予定の使用額との差異が生じている。次年度は研究成果公表に専念するため、論文執筆時に必要となった補助的な文献の収集に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)