2021 Fiscal Year Research-status Report
河太郎物の絶版処分と再刊を手がかりとした18世紀大阪出来作品の享受に関する研究
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20K12937
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
野澤 真樹 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 講師 (90802900)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世文学 / 滑稽本 / 大阪騒壇 / モデル小説 / 日本近世文学 / 出版 / 絶版処分 / 大阪 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は2020年度に続き新型コロナウイルス感染症感染拡大のため、書誌調査のための出張が制限された。したがって当初の予定を変更し、研究対象とする「河太郎物」3作品につき、出版の経緯の調査と、出版に関わった人物の調査を行うとともに、これまで行った書誌調査で得た情報と「河太郎物」成立の背景との関連を可視化することを目指した。 本課題では当初「河太郎物」の享受を探ることに重点を置いたが、2020年度に研究方法の変更を余儀なくされたことで、まずは「河太郎物」成立の経緯を探る方向に方針転換を行った。その結果、2021年度には一定の成果があり、成立の経緯を考察するための前提として「河太郎物」の出版に関する問題点を再考し、発表した(「寛政期「河太郎物」の刊行と絶板」『國語國文』第91巻3号)。とりわけ「大阪本屋仲間記録」の「河太郎物」に関する記述を網羅し、明らかになった点とともに問題点を整理したことで、作品そのものの成立の問題に結びつけることができた考えている。 また、個々の作品の精査のため、未翻刻作品である『通者茶話太郎』の翻刻と注釈を2020年度に続いて発表し、一旦完結させることができた(「『通者茶話太郎』翻刻及び略注(下)」『鯉城往来』第24号)。 調査の過程で、「河太郎物」の先行2作品に比して、後出2作品では登場人物の描き方に一定の配慮が加えられているほか、大阪の外の書肆から刊行することで、大阪の本屋仲間の検閲を避けて出版に漕ぎ着けた可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究方法の変更を行ったため、当初の予定(研究対象の書誌調査)は2020年度に続き遅れている。一方で、作品の成立過程に関して計画以上の成果があり、その点で一定の進展があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度、2021年度に取り組んだ作品の成立過程に関する調査の成果について、2022年度内に発表して一区切りとする予定である。また、2022年度からは当初予定していた書誌調査を再開し、これまでの研究を補強するとともに当初の課題であった「河太郎物」の享受に関して考察を進める。加えて、作品内容の精査は2022年度も継続する予定であり、『川童一代噺』の前半の翻刻・注釈を発表する。
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Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、2021年度も経費による出張がかなわなかったため、旅費の大部分を次年度に回すこととした。次年度使用額は2020年度、2021年度に予定していた出張を含め、2022年度の調査旅費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)