2022 Fiscal Year Research-status Report
河太郎物の絶版処分と再刊を手がかりとした18世紀大阪出来作品の享受に関する研究
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20K12937
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
野澤 真樹 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 講師 (90802900)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 近世文学 / 滑稽本 / 大阪騒壇 / モデル小説 / 出版 / 絶版処分 / 狂歌師 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は2021年度に行った「河太郎物」出版の経緯および出版に関わった人物に関する調査を継続し、成果を得た。また、「河太郎物」周辺の18世紀大阪出来作品におけるモデル利用の方法につき、「河太郎物」の方法を比較対象として考察を行った。 2021年度の「河太郎物」出版経緯の整理をもとに、2022年度は鉄格子波丸作の河太郎物『戯動大丈夫』『通者茶話太郎』に焦点を当て、両作品に関与した人物集団の考察と、それが両作品にどのような影響を及ぼしているかを考察した。その内容は2022年6月の日本近世文学会春季大会にて口頭発表を行い(「寛政期「河太郎物」の発生源および成立の前後関係に関する一考察」、於中京大学オンライン会場)、論文化した(「『戯動大丈夫』『通者茶話太郎』の成立に関する一考察-寛政期「河太郎物」の刊行計画と丸派の狂歌師 」、『近世文藝』117号、2023年1月刊行)。また、「河太郎物」と同期の大阪出来作品として、『世間妾形気』のモデル小説としての方法を整理、発表した(「モデル小説としての『世間妾形気』、『鯉城往来』25号、2023年1月)。 2022年度は、2021年度まで新型コロナウイルスの感染拡大により停滞していた「河太郎物」の書誌調査を徐々に再開することができた。具体的には、都立中央図書館に所蔵され『通者茶話太郎』の書誌調査、および東京国立博物館所蔵の『川童一代噺』の書誌調査を行った。前者は、現存する版とは異なる異版が混入する特殊な資料であり、後者は「文化十三年」の刊記を持つ現在唯一の本で『川童一代噺』再刊時期の手がかりとなる資料であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度から継続して行った「河太郎物」の成立過程に関する調査については2022年度に一定の成果を得ることができ、順調に進捗している。ただ、成立過程に関する調査を優先したため、2022年度に予定していた『川童一代噺』の翻刻・註釈は2023年度以降に持ち越しとした。一方、「河太郎物」の書誌調査に関しては、2022年度の時点で、新型コロナウイルス感染拡大にともなう部外者の入館制限等により訪問がかなわなかった機関が一定数あるため、見るべき資料を残している状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2022年度に一部再開することができた「河太郎物」の書誌調査を継続し、現時点で所在が分かっている資料のうち未見のものを順次確認する。また、2022年度までに行ってきた「河太郎物」の出版経緯に関する調査を踏まえて、「河太郎物」個々の作品間での内容の変化等を考察、発表する予定である。加えて2022年度から持ち越した「河太郎物」の翻刻・註釈も進めていく。
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Causes of Carryover |
2022年度から2023年度の間に勤務先の異動を予定していたため、とくに年度の後半に物品の購入等が滞った。2023年度には2022年度の繰り越し額と合わせ、新しい研究環境において必要な物品、図書の購入を進めるとともに、予定よりも遅れている資料調査を重点的に進めるための旅費を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)