2021 Fiscal Year Research-status Report
英米文学と初期米国心理学・精神分析学との関係性:宗教との関連を軸としながら
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20K12959
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮澤 優樹 金沢大学, 歴史言語文化学系, 講師 (00846800)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文学と宗教 / 英米文学 / 文学と思想 / 文学と心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は本研究課題における計画のうち2年目に当たる。昨年度には、ヘンリー・ジェイムズやイーディス・ウォートン、F・スコット・フィッツジェラルドら英米の作家と、作品成立の背景となった思想的状況の基礎的な調査を行った。それを受けて、本年度においては、同時代の思想的背景や学術的な成果が、作品において具体的にはいかなる仕方で表れているかを検討した。具体的な成果としては以下のようなものである。第一に、ヘンリー・ジェイムズの初期作品における、人間心理の描かれ方を具体的に考察した。この過程において、初期に書かれたいくつかの短編作品がもつ重要性が浮かび上がった。考察を通し、一般にはジェイムズ後期の特徴とみなされており、かつ彼が心理学から受けた影響の大きさを物語るとされている要素が、本作品においてすでに、円熟期のものの原型ともいえるありさまを見せていることが明らかになった。第二に、ヘンリー・ジェイムズと彼の抱いた関心に影響を受けた作家として、米国南部を代表する作家であるフラナリー・オコナーの作品について、人間心理の描き方という観点から考察を行った。カトリックの信仰に基づき執筆活動を行ったため、オコナーの作品は宗教との関連からしばしば論じられる。そのような論点を、ヘンリー・ジェイムズとの関係から改めて検討しうる可能性がある。また、人間の意識という問題を広い意味で捉え、そのような観点からチャールズ・W・チェスナットの作品について考察した。これらの研究はいずれも、研究対象とする作家や作品に対する見方を更新しうる要素を持っており、また宗教や関連する思想が文学史へ与えた影響の大きさを示唆するものである。なお、これらの研究成果のうち、いくつかはすでに査読付き学術雑誌にアクセプトされており、次年度以降に公表される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に行った基礎的な調査が、2021年度においてある程度順調に具体化した。雑誌論文として研究成果を公表する見通しも、いくつかのものについては立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ジェイムズやウォートンにおける意識や心理の描き方について考察を進める。また、そこに宗教的観点がいかに入り込んでいるかを考察する。その意味で、作家らの描く登場人物の苦難が大きな検討対象のひとつとなる見込みである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍につき旅費として使用する見込みであった予算につき残額が生じた。次年度以降、旅費として使用可能であればそのように使用し、旅費としての使用が難しいようであれば資料の収集に要する費用に充てる。
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