2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and empirical research on information content and phonological redundancy
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20K13000
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
橋本 大樹 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 助教 (90867300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 予測可能性 / 頻度 / 音声的余剰性 / Exemplar Theory / コミュニケーション / 音声信号 / 情報理論 / 自然発話コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コミュニケーションにおける音声信号の余剰性 (phonetic redundancy) と、メッセージの予測可能性 (predictability) の関係について明らかにする。例えば動物園の話をしている際に、「ペンギン」や「らくだ」といったメッセージが伝達されることはある程度予測できる。一方で海水浴場の話をしているときには、「ペンギン」や「らくだ」といったメッセージの伝達は予測できないだろう。予測可能性の高いメッセージは情報量 (information content) が低く、予測可能性の低いメッセージは情報量が高いとされる。動物園というコンテクストでは「ペンギン」は情報量が低いが、海水浴場というコンテクストでは「ペンギン」は情報量が高い。こうした情報量に応じて、我々が発話において産出する音声信号がどの様に変化するかを明らかにしている。 今年度の実績として、こうした情報量が語の長さと語の高さに影響することを明らかにした。情報量の高い形態素は持続時間が長く発音され、情報量の高いものは高い声で発音される傾向があることを、自然発話コーパスを用いて明らかにした。情報量の高いものは音声的余剰性が多く発音されるということである。 このことは我々がコミュニケーションにおいて情報伝達の正確さと簡略さのトレードオフしていることを示唆する。つまり情報量の高い語は丁寧に発音され、コミュニケーションを確実なものにしようとしている。一方で情報量の低い語は簡略化して発音され、コミュニケーションの円滑さを向上させていると説明することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施については比較的順調に進んだと考えている。予定していたよりも早い段階で、プログラムを組むことができ、必要なデータ分析を行うことができた。論文としてまとめる作業でも、査読者からのフィードバックを適切に反映できた。 一方で研究成果の発表は順調ではなかった。これは社会状況のために多くの国際会議がキャンセルまたはオンライン化してしまったことと、査読が一時滞っていたことが理由である。 研究実施は円滑であった一方で、発表が思うように進まなかったため、(2) おおむね順調に進展している を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
一つは、今年度明らかにしたことを、別の音声情報に拡張する予定である。今年度は主に形態素という言語単位を軸に研究を行った。今後はより小さな単位である、分節音のレベルにおける情報伝達の正確さと簡略さのトレードオフを明らかにしたい。そのためのプログラムは今年度末におおむね構築することができたので、来年度は理論と照らし合わせながら研究成果をまとめる。 もう一つの推進方策は、今まで議論されてこなかった予測可能性の効果を明らかにすることである。音声余剰性と情報量に関わる多くの研究は情報量を p(linguisticUnit|adjacent linguisticUnit) として定義している。つまり直近の言語単位 (語・形態素・音節・分節音) をコンテクストに用いて情報量を算出している。しかしこれ以外の予測可能性の規定もできる。例えば Hashimoto (2020) Probabilistic Reduction in Relation to Social Message Predictability (Linguistics Vanguard 6: 20190052) では、社会的異形 (rhotic tap vs. rhotic approximant) の予測可能性を借用語をコンテクストに規定した。こうした今まで議論されてこなかったタイプの予測可能性の音声信号への効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
社会情勢により国際会議および国内の学会がキャンセルされたため。次年度使用額(繰越額)のこれからの使用計画として、論文の投稿費用、校閲費用、人件費などに充てることで、より洗練された研究を行う。
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Research Products
(2 results)