2022 Fiscal Year Annual Research Report
無意志自動詞を出自とする日本語可能表現の歴史的研究―「自発」と「可能」―
Project/Area Number |
20K13045
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
三宅 俊浩 宇都宮大学, 共同教育学部, 助教 (20777354)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 可能表現 / 当為表現 / 日本語史 / 文法史 / 変化 / 漢文訓読 / 変体漢文 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である2022年度には、書籍内論文を刊行することができた。当初予定していた形式はカナフ・ナル・デキルであり、このうちデキルとナルの絡み合いを記述した論文である。他に、年度末に研究会発表を1件行った。これまでの研究を整理するとともに、これまでの研究で得られた成果をもとに今後どのように研究を発展させていくかを述べる展望的内容である。この発表に向けて準備することで、これまでの研究内容を自分なりに整理できた。それと同時に、今後どういう方向で研究を進めていけばよいか、区切りの良いタイミングで見つめることができる良い機会であった。 研究計画の3年間を通して、当初予定していた内容を概ね遂行できたと考える。とりわけ、カナフの歴史を論じた2021年刊行の論文では、カナフの語史に留まらず、中世前期における文法事象を記述する際には、中古の漢文訓読語法との関わりや変体漢文語法との影響関係を考慮に入れる必要があることを実証的に示すことに成功したと考えている。すなわち、一つの語の歴史を記述するのみならず、古代語の文法研究(文法変化研究)全体に波及する重要な問題点の提起を行うことができたと考えている。その意味で、今回の研究は質的に予定よりも有意義なものになったと考える。ただし、量的にはいささかの乏しさを感ずる。とりわけ、中世室町期を対象としたナルの使用状況については十分に記述できたとは言い難く、その点で若干の課題を残す形となった。2023年度から始まる研究期間の中で消化することとしたい。
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Research Products
(2 results)