2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13052
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
當山 奈那 琉球大学, 人文社会学部, 准教授 (90792854)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 琉球諸語 / ヴォイス / 使役 / 利益性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はCovid19の影響で、現地調査を実施することができなかった。このため、次のようなことを行った。 (1)方言個別のヴォイス体系の概観の把握と記述 過去に調査で得た首里方言、平安座島方言、徳之島方言、与論方言に恩納村のデータを加え、受動文、使役文、授受文のヴォイスに関わる各構文について、自動詞受動文、間接受動文の構文の有無、使役動詞の派生の仕方、二重使役文の有無、授受動詞のシステムとシテモラウ、シテクレル相当形式の存在の有無、自他動詞の対応関係、自動詞構文と他動詞構文、再帰動詞と再帰構文、再帰動詞のヴォイス特徴、相互動詞と相互構文、相互動詞のヴォイス特徴の整理を行なった。方言によって得られたデータ量に偏りはあるが、ある程度の整理を行うことができた。 (2)方言相互の比較と方言個別の調査・琉球諸語内のヴォイス構造、意味、形式の発展を考察 特に使役文のシム形に焦点をあてて、万葉集や源氏物語の用例も加えた上で、二重使役文や利益性に関する考察を行なった。琉球諸語の使役文は、述語動詞の形態論的な特徴として、ス相当形式とシム相当形式を持つ方言とス相当形式のみを持つ方言がある。また、構文論的な特徴として、二重使役文を持つ方言と持たない方言とがある。そして、二重使役文を持つ方言では、その作り方に形態論的な違いや、述語動詞の制限の違いがみられた。形態論的な違いは、ス相当形式によって二重使役文を作るか、シム相当形式によって二重使役文を作るかである。さらに、万葉集でシム形式を述語にもつ文にも二重使役文とみなせる例が存在すること、また、無意志動作の例が多いことも示し、二重使役文とシム相当形式の関係について考察した。この内容は、令和3年に研究会で報告予定であり、国内雑誌への投稿も検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
covid19の影響により、面接調査が実施できない状況が続いている。予想はしていたので、これまで収集した用例と言語資料からの用例収集に努めた。また、2年目に予定していた日本古典語からの用例収集やおもろさうし(琉球古典語)の用例の収集も実施することで、ある程度研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査に行くことができない状況が続くことが予想されるため、調査地点を限定し、現地での実地調査の代替として、調査票をレターパックで郵送して行う通信調査や、Zoomを利用した遠隔調査を実施する予定である。 談話資料等をもとに、方言個別の分析・記述を行いながら、それぞれのヴォイス体系をまとめることを続け、個別方言の言語現象をふまえた追加調査票の作成と調査を実施し、方言相互の類似点・相違点をふまえることによって、方言個別のより細かい記述に努める、というような双方向的な調査研究を行う。 特に使役文と使役動詞に関する記述に焦点を当て、学会発表や論文投稿を行い、フィードバックを得る。
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Research Products
(2 results)