2020 Fiscal Year Research-status Report
Danger of Information Manipulation due to Depiction of Action
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20K13056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宿利 由希子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (10844649)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 情報操作 / 動作の表現 / 日本語社会 / 「悪人」キャラ / 悪印象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語社会が言語的側面から情報操作の影響を受けやすい社会であることを示すものである。そのため、3つの仮説を検証するが、2020年度は「仮説1:日本語社会は、ことばと特定の印象との結びつきが他言語社会より強い」を検証した。具体的には日本語、英語、中国語、ロシア語の使用実態について、日本語のコーパス、新聞、また各言語の小説を用いて調査を行った。 日本語の書き言葉コーパスの分析から、「うろつく」「泣きわめく」などの表現の動作主として、人間以外の生き物や好ましくない人物、精神に異常をきたした人物の場合が多いこと、また、悪印象を伴わない動作の表現に関しても、日本語は動作主の人物像が表現使用に大きく影響していることが明らかになった。さらに日本語の新聞記事の分析から、ストーカー規制法違反に関する報道において「つきまとう」「うろつく」などの悪印象を伴う表現が用いられ、特に被疑者が無職の場合、このような表現が多く使われる傾向にあることがわかった。 小説を用いた他言語との比較観察から、日本語社会はことばと特定の印象との結びつきが他言語社会より強い可能性が示された。ロシア文学『罪と罰』のロシア語原文および日英中翻訳版の比較から、日本語翻訳版では「にやにや」「薄笑い」など悪印象を抱かせる「悪人」キャラの笑い方の表現とも呼べるような表現が用いられている。一方、他言語では悪印象を伴わないニュートラルな表現が使われている。また、英文学『クリスマス・キャロル』『大いなる遺産』の日英比較、日本文学『或る女』の日露比較から、日本語版では登場人物の人物像に応じて動作の表現が類語表現によって使い分けられているのに対し、他言語ではその傾向が日本語より弱いことがわかった。 これらの知見について、すでに『日本語学(明治書院)』、所属先年報、日本語学会発表で報告したほか、今後も所属学会にて発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、小説、新聞等を用いた4言語のことばの使用実態調査と、日本語母語話者を対象としたことばと対象の印象に関する質問紙調査を国内1都市で行う予定であった。前者は概ね順調に進んだが、後者は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、対面での実施が困難となったことから、行うことができなかった。 2021年度も対面による質問紙調査の実施は困難な可能性が高い。そのため2021年度は、年度の早い段階で、予備調査としてオンライン調査を行う。その結果、十分信頼できるデータが得られるようなら、本調査においてもオンラインの手法を用いる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度同様「仮説1:日本語社会は、ことばと特定の印象との結びつきが他言語社会より強い」と、さらに「仮説2:日本語社会は、発信者が悪印象を伴うことばで対象のふるまいを表した場合、受信者が対象に抱く印象が悪化する度合が他言語社会より大きい」を検証する。具体的には、①小説、新聞等を用いた4言語のことばの使用実態調査を継続するとともに、②日本語母語話者、ロシア語母語話者、中国語母語話者を対象とした意識調査を行う予定である。 ①について、中国語の小説における悪印象を伴う登場人物のふるまいの表現と日本語翻訳の比較調査、および、英語・ロシア語・中国語新聞におけるストーカー関連報道で用いられる表現の使用実態調査を行う。 ②について、2020年度は実施できなかった国内1都市と当初予定のもう1都市の計2都市において、日本語母語話者を対象にことばと対象の印象に関する質問紙調査を行う。また当初の予定では、ロシアと中国へ出向き対面による質問紙調査の実施を計画していたが、新型コロナウイルスの影響で少なくとも2021年度前半の渡航は困難であると予想される。日本国内およびロシア、中国の調査においても新型コロナウイルスの影響で渡航が困難な場合、2021年度前半に予備調査としてアンケートアプリを用いたオンライン調査を行う。その結果十分信頼できるデータが得られ、かつ2021年度後半においても渡航が困難であれば、本調査においてもオンラインの手法を用いる。予備調査の結果の信頼性に疑義が生じた場合は、ビデオ通話アプリと調査票のPDFを用いた調査方法に変更し調査を実施する。 これらの調査結果については、日本語学会、日本語教育学会、社会言語科学会等の所属学会の大会および学会雑誌、また所属先紀要において発表する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、調査出張および学会発表出張のために計画していた旅費、調査協力謝金を使用しなかったため、繰越分が生じた。 出張旅費について。新型コロナウイルスの影響で国内外への渡航が困難な状況が続く場合、出張旅費は2021年度も使用できない可能性がある。その場合は、調査対象者を増やし、調査協力者謝金を増加する予定である。 調査協力者謝金について。「8. 今後の研究の推進方策」に示した通り、新型コロナウイルスの影響が長引くようであれば、2021年度の意識調査はオンライン形式で行う。当初から、回答時間が30分程度と負担が大きく不特定多数の質問紙調査協力者を見つけることは困難なことから、1名500円(時給1000円換算)の調査謝金を計上している。オンライン形式であってもこのような負担や困難は消えないため、調査謝金は質問紙調査同様支払うことになる。質問紙調査では調査直後に直接手渡しできるが、オンライン調査では調査後、場合によっては後日の支払いとなる。
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