2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K13058
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Research Institution | Tokoha University Junior College |
Principal Investigator |
中野 直樹 常葉大学短期大学部, 日本語日本文学科, 講師 (00828650)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 漢文訓読 / 古辞書 / 古字書 / 四書體註 / 増続大広益会玉篇大全 / 金良宗邦 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、北谷町役場に所蔵されている『四書體註』(金良宗邦氏旧蔵)の欄外に見られる字書による書き込みの調査を行った。漢文訓読の場において、日本では古くから字書を本文の字義の解釈のため利用することがあったが、琉球でも漢文訓読が行われていたのであれば、これと同様の事象(漢文訓読に付随する形での字書利用)があったことが考えられる。琉球だけでなく、その後の沖縄において、漢文訓読の際にどういった字書がどのように利用されていたのかという点は、当地の漢文訓読事情に関連して興味深い問題である。北谷町役場の『四書體註』の欄外余白には、元所蔵者の金良氏のものと見られる書入れが散見される。この書入れのうち字書の引用文については、近世琉球以来沖縄でどのような字書が流通していたのか、またどのように字書が利用されていたのかを伺うことができる点で国語学的に注目される。研究の結果、以下の三点が明らかとなった。 ①近代沖縄には「玉篇大全」以外にその改編本も流通していたと考えられる。改編本については、琉球に残存する漢籍・字書類の目録に上がっておらず、現物も確認されていない。おそらく、当時琉球で流通していた字書類の多くはすでに失われたと考えられる。 ②「体注」の字書引用文は複数字書が典拠となっている可能性がある。 ③字書と「体注」の訓点には一定の関係がある。ただし、「玉篇大全」であることを明示していないので、字書を権威的に利用していない。 本研究課題の目的の中に、琉球の訓法が何かの文献に依っているのかどうかを確かめるということを設定していた。本稿は、その問いに対して部分的ではあるが答えたものである。
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