2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13066
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
杉浦 克哉 愛知学院大学, 教養部, 講師 (40781498)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 名詞前位修飾 / 現在分詞 / please / 主題 / (非)有生名詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究成果として「英語史におけるpleasingの名詞前位修飾構造の出現について」を『大室剛志先生退職記念論文集』(開拓社から2022年3月刊行予定)に投稿した。 この論文では現代英語のa pleasing answerのようなpleasingが名詞を前位修飾する構造の英語史における出現について考察した。古英語では現在分詞の名詞前位修飾は基本的には自動詞の現在分詞に限られていたため、二項動詞であるcweman, licianの現在分詞は名詞を前位修飾しなかった。中英語でcwemanの現在分詞が名詞を前位修飾しなかったのは、cwemanの主題のほとんどが代名詞だったからである。後期中英語にcwemanはフランス語からの借用語plesen ‘please’にその地位を取って代わられた。Pleaseは主題に代名詞だけでなく名詞も取ったため、a pleasing answerのような名詞前位修飾が可能だった。また中英語にlykenの現在分詞が名詞を前位修飾する構造が現れるが、これはlykenは主題に代名詞だけでなく名詞も取ったからである。 本研究実績は2つの意義、及び重要性を持つと思われる。第1に本研究実績は経験的領域において歴史言語学に貢献する。英語史研究では現在分詞の名詞前位修飾構造を扱った文献はほとんどない。この論文ではpleasingに焦点を絞り、pleasingの名詞前位修飾構造がなぜ14世紀後半に現れたのかを歴史コーパスとOxford English Dictionaryから収集した資料と先行研究の資料に基づき説明した。 第2に本研究実績は今後の研究の発展の可能性を示した。本研究実績で行った方法と同様の手法の調査、分析はplease以外の心理動詞にも拡張できる。そうすることで、名詞を前位修飾する心理動詞の現在分詞の出現に関する一般化を導き出すことができると思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では2021年4月または5月に英語の心理動詞の現在分詞が前位修飾する名詞句の研究成果の論文を投稿することとなっているので、この計画通りには進んでいる。しかしながら、投稿した論文は記述的な分析をするに留まり、理論的な考察を行うことができなかった。そのため「おおむね順調に進展している。」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
Please以外の心理動詞、例えばamuseやsurpriseなどの心理動詞の現在分詞の歴史調査を行うことを考えている。Please, cweman, licianの調査と同じく、他の心理動詞が主題主語に有生名詞・非有生名詞をどの程度の割合で選択したか、そして名詞主語・代名詞主語をどの程度の割合で選択していたかを調査する。調査結果から一般化や傾向が見られないかを検討する。それを踏まえ、改めてLandau (2010)などの生成文法理論の枠組みを応用できないか検討する。調査結果を2020年中に紀要論文などで発表したい。 また、現在分詞・過去分詞の名詞後位修飾用法の研究を計画に従い2020年6月から行う。2つの研究を並行して行うことになるが、夏休み期間をうまく活用して研究を進める。現在分詞・過去分詞の名詞後位修飾構造や動名詞で見られる束縛現象を、Abe (2014)のA Movement Theory of Anaphoraで提案される照応形の移動理論を使って説明することを考えている。
|
Research Products
(1 results)