2020 Fiscal Year Research-status Report
近代朝鮮における「婦人」の形成プロセスと女子中等教育
Project/Area Number |
20K13162
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
崔 誠姫 中央大学, 政策文化総合研究所, 客員研究員 (10867592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 朝鮮史 / 植民地教育 / 中等教育 / 近代女子教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.2020年10月国立歴史民俗博物館、2021年2月桃山学院大学、2021年3月北海道立文書館・札幌市公文書館にて資料調査を行った。特に桃山学院大学学院史料室において、柳原吉兵衛資料の調査・収集を実施した。柳原吉兵衛は戦前、奈良女子高等師範学校に朝鮮人女子留学生を斡旋した実業家である。当史料室には、柳原が所蔵していた留学生との書簡、朝鮮の中等教育関連資料等が多数所蔵されており、中には韓国や国内にも所蔵されていない貴重資料があった。今回の調査では平壌女子高等普通学校一覧、朝鮮女子教員視察団の記録、朝鮮内の女子中等学校校長から柳原への進学斡旋を求める書簡などを収集した。史料数は大変膨大であり、今後の調査に必要な書簡類などの予備調査も同時に実施した。上記の収集資料は、これまでの研究を補完する貴重な資料といえる。また、奈良女子高等師範学校の朝鮮人留学生は卒業後、朝鮮で中等教員になる場合がほとんどであり、日本で学んだことを朝鮮に持ち込み、「婦人」の形成に多大な影響を与えたものと考えられる。そのため、今回収集した資料に加え、柳原資料に含まれる奈良女高師関連資料を継続して調査する必要があることが判明した。 2.本研究課題をもとに、笹川紀勝,李泰鎭,邊英浩編著『国際共同研究 三・一独立万歳運動と植民地支配体制 : 三・一独立万歳運動100周年記念出版 : 国民意識の誕生』(明石書店、2020年12月)の共著者として、第16章「第二次朝鮮教育令施行期における中等女子修身教育」を寄稿した。修身教科書は朝鮮総督府が編纂しており「中堅の婦人」としての将来を期待されていた朝鮮人女子生徒に、総督府がどのような「期待」を抱いていたのかを、教科書分析を通じて明らかにした。 3.オンラインで開催される各学会・研究会に参加し、本研究課題に関連する情報収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.コロナ禍でありながらも、可能な限り国内調査を実施し、特に桃山学院大学史料室での調査では新たな史料を発掘することができた。これらの史料をもとに、研究の進展が期待できる。 2.これまで収集してきた資料の整理、分析、さらに関連分野となる近代日本や台湾のジェンダー史、教育史に関連する文献を講読し、周辺領域の知見を深めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.コロナ禍の中で韓国をはじめ他国への移動が制限されているため、今年度初めに参加予定であったAKSE(ヨーロッパ韓国学会)への出席は断念せざるを得ない状況である。そのため、国内の各学会へのエントリーを積極的に行い、本研究テーマに関する研究を進めていく計画である。特に、概要欄で述べた桃山学院大学史料室における柳原吉兵衛資料の調査収集に注力し、朝鮮婦人の鑑ともいえる女子中等教員の実態について、より深く調査を進めていく計画である。 2.上記に加え、女子中等教員養成機関であった奈良女子大学、朝鮮人女子留学生を積極的に受け入れていた日本女子大学等での調査を進め、分析に加えたい。
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Causes of Carryover |
2021年2月末に資料整理用の事務用品、記録用のデバイス等を購入したが、会計処理の関係で次年度支払いとなった。
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Research Products
(1 results)