2020 Fiscal Year Research-status Report
世紀転換期における日本イメージの対独発信:広報文化外交と戦時国際法の利用
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20K13165
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
堅田 智子 流通科学大学, 商学部, 講師 (50802485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日独関係史 / 日本イメージ / 広報文化外交 / 戦時国際法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウイルス感染拡大により、研究・教育の両面で予想だにしないほどの大きな変化を強いられた。とりわけ本研究課題の遂行に必要不可欠な日本国内外での資料調査は、移動制限、渡航制限のため、年間を通じて実施できなかった。 まずは、年次計画を大幅に修正した。海外での資料調査は、年度内の実施は困難と判断し、2021年度以降に先送りとした。「平時における軍部、日本赤十字社、大学での戦時国際法教育」に関する[個別研究A]、「戦時における戦地での戦時国際法教育成果の実践」に関する[個別研究B」のうち、日本国内かつ大規模移動をともなわなくとも調査可能な内容について、文献の収集と分析に注力し、情報の整理に努めた。また、[個別研究A]で用いるブランデンシュタイン城シーボルト・アーカイヴ所蔵の資料群については、研究代表者が共同研究員として参加している国立歴史民俗博物館による調査ですでに多くを高精細画像として撮影済みであったため、これらを使用し、読解・分析および目録の整備を進めた。 さらに、本研究課題の基礎をなす広報文化外交(パブリック・ディプロマシー)の定義について、いま一度、先行研究を見直し、問題点を整理・検討した。これまで研究代表者の研究においては、「文化」という概念の抽象性を理由に、実施時期に応じて「広報外交」と「広報文化外交」を区別し、使用していた。しかし、たとえば本研究課題で扱う戦時国際法教育についていえば、「教育」を「文化」の一部とみなす、すなわち「文化」の意味を広義にとらえることで、広報文化外交の実態が解明でき、本質に迫れるとの結論に至った。 研究発表も、雑誌や書籍の刊行の遅れや、招聘されていたオーストリア共和国ウィーンでの国際シンポジウムでの口頭報告の延期(のちに中止)、国内での学会の延期が相次いだ。そのため、十分に研究成果を発信することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の応募時においては、本研究課題30%、本研究課題以外の研究活動30%、その他の活動(教育)40%というエフォートを想定していた。しかし、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大をうけ、勤務校では前期は遠隔授業とし、後期は一部講義を対面型としながらも、引き続き遠隔授業を継続した。こうした教育方法の全面的な変更は、研究代表者に限らず、全国の大学教員が直面し、早急に対応しなければならない問題であった。そのため、エフォートのほとんどを教育に回し、とくに前期は本研究課題のみならず、研究全般にエフォートを割くことができなかった。 また、本研究課題は、国内外での資料調査が不可欠であるが、移動制限、渡航制限の解除やその見通しが立たない。研究ペースは落ちたものの、現地調査が実施できない分、本研究課題の遂行のために蓄積していた資料の分析を進めることができたため、「(3)やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の要である国内外での資料調査は、ワクチン接種や特効薬の開発により、新型コロナウイルスの感染が終息、少なくとも鈍化するまでは、制限を強いられることが予想される。とくに海外渡航制限についていえば、最悪の場合、4年間の研究年限期間中、継続される可能性もあろう。 こうした問題は、研究代表者の努力によって解決を見るものではない。そこでまずは、応募時に想定したエフォートの分配に戻し、本研究課題に取り組む時間と労力を確保する。2020年度の場合、遠隔授業への切り替えが研究代表者にとっても初めてのことであったが、この経験を2021年度に生かし、エフォートを戻していく。 また、研究方法と年次計画についても、新型コロナウイルスの感染状況を見ながら、適宜、修正をしていく。国内での調査については、[個別研究B]として実施しているが、調査先の受け入れが可能であれば、感染予防対策を徹底し、調査を実施していく。
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Causes of Carryover |
本研究課題の遂行にあたっては、国内外での資料調査が必要不可欠であるため、申請時の年次計画では、2020年度に国内での資料調査と夏季にスイス、ドイツでの資料調査を予定していた。その後、新型コロナウイルス感染拡大にともない、交付申請時には旅費を減額したものの、1年以上の移動制限、渡航制限が継続することは2020年4月時点で想定できなかった。本研究課題のエフォートの著しい低下もその度合いまでは想定できず、次年度使用額が生じることは、回避しようがなかった。 そもそも本研究課題では、助成金額に占める旅費の割合は高い。移動制限、渡航制限の緩和・解除がない限り、とくに費用を要す海外での資料調査は実施困難である。国内外の調査先で遠隔調査の対応が可能であれば、積極的に活用する。また、差額を物品費に振り替える等の現実的な措置を講じつつ、本研究課題を遂行していく。
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