2020 Fiscal Year Research-status Report
植民地/占領地銀行の政治外交史研究――マルチアーカイブによる帝国拡大過程の再検討
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20K13166
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 亮介 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00735748)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本政治外交史 / 暴力と通貨 / 帝国 / 植民地銀行 / 国際金融 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の第1年度目となる本年度は、当初の研究計画では、諸外国(とくに英米)における史料調査によって本研究のキックオフにむけた基礎を築く予定であったが、コロナ禍によって根本的な計画の再編を迫られた。また、国内出張もしばしば中断や困難に直面せざるをえなかった。そのため、本年度は国内史料収集を中心に切り替え、また遠隔複写サービスを適宜利用することにした。具体的には、まず遠隔複写では「要審査」史料を中心に、日本銀行金融研究所アーカイブが所蔵する「田中鉄三郎関係資料」「吉野俊彦関係資料」、国立公文書館が所蔵する「賀屋(興宣)文書」(財務省移管「戦後財政史資料」所収)など大蔵省・日銀・朝鮮銀行官僚の未公刊史料を収集した。また国立国会図書館憲政資料室において「高橋亀吉関係文書」「阪谷希一関係文書」など朝鮮銀行関係者の史料を閲覧し、従来注目されてこなかった植民地銀行の政治外交史的研究への見通しをつけることができた。また、見落としてきた中国政治史研究の蓄積の摂取に努め、日本占領地における通貨と権力の関係について解像度を高めることができた。 こうした「日本回帰」の副産物は、本研究課題に占める出先軍の重要性に気づけたことである。憲政資料室の「寺内寿一関係文書」「多田駿関係文書」「憲政資料室収集文書」や、防衛研究所の「住谷悌史資料」(オンライン化)といった史料の閲覧を通じて、帝国拡大期の大陸経済政策と日本陸軍という古典的主題を、新たな視角と史料により掘り下げる必要を痛感した。対外膨張自体は軍事的なものでも、その果実を固定するうえで占領地経営や地域開発といった経済政策や人心掌握の視点が占領軍にとって不可欠となるからである。本年度はまた、戦時地域開発の貫戦史的帰結というべき戦後北海道開発への日本社会党の参与について、党の建設期については研究会報告を、解体再編期については論文執筆を、それぞれ行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来行うはずだった諸外国での史料調査がコロナ禍によって不可能となり、さらに国内での史料調査も大きく制約されることとなったため。 もっとも、遠隔複写サービスも組み合わせた国内史料収集や、オンライン化した膨大な史料の集中的閲覧をすることができた。こうした効率的な研究態勢に再編したことで、当初予期していなかった変化による進捗の滞りを、最小限にとどめることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内史料収集に切り替えたことの副産物で、軍の重要性に気づくことができたため、今後は対象となるアクターを経済系官庁やエコノミストに限定せず、大陸で大規模に展開する軍が直接ないし間接的に影響を及ぼした経済政策について、2年度目に検討を進めたい。また、当面はなお海外出張が難しいことに鑑み、入手可能な範囲の史料のみでひとまずたたき台となる議論を整え、研究ノートとして大学の紀要に投稿することをめざす。
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Causes of Carryover |
令和2年度の研究費に関しては、359円の残額が生じた。これは、経費の節減・効率的使用によって発生したものである。
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Research Products
(9 results)