2021 Fiscal Year Research-status Report
戦後初期の協同民主主義に関する総合的研究―矢部貞治と松谷誠の思想と活動を中心に―
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20K13168
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
大谷 伸治 弘前大学, 教育学部, 講師 (50826899)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 共同体的衆民政 / 協同民主主義 / 矢部貞治 / 松谷誠 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響で、史料調査に行くことができず、戦後期に関する調査はまったく進めることができなかったため、『オンライン版 矢部貞治関係文書』(丸善雄松堂、2018年)、『オンライン版 矢部貞治関係文書 補遺』(丸善雄松堂、2019年)で発見した、矢部の政治思想の萌芽を物語る中学生~大学生時代の史料群の翻刻・分析をおこない、順次論文を執筆し公表した。 『弘前大学教育学部紀要』に連載中の論文「大学生時代の矢部貞治」では、矢部在学当時の東京帝国大学法学部政治学科課程をおさえたうえで、矢部が受講した講義を明らかにし、新たに発見した講義筆記ノート7冊(6科目)の年度を特定した。そして、教授たちからどのような影響を受けたのかを考察中である。現在、牧野英一(刑法)、吉野作造(政治史)、上杉慎吉(憲法、社会学)、美濃部達吉(憲法)、田中耕太郎(商法)、小野塚喜平次(政治学)、末弘厳太郎(労働法制)、筧克彦(行政法)、土方成美(財政学)からの影響の考察を終えた。来年度中には完結を予定している。 論文「「矢部貞治日誌」にみる災害と感染症:大正七年鳥取大洪水とスペイン風邪」(『北大史学』第61号、2021年)では、矢部の鳥取県立鳥取中学校時代の日誌から、大正七年鳥取大洪水の罹災状況とスペイン風邪流行時の生活を詳らかにし、これらの原体験が矢部をしてデモクラシーと社会民主主義の調和をめざし終生協同主義者であり続けた背景にあることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で、史料調査に行くことができなかったため。夏期休業中は教育実習があり、出張に行くことが難しかった。冬期・春期休業中はまん延防止等重点措置のため、公共施設は閉館となった。矢部と政治家との関わりを明らかにするためには、「中曽根康弘関係文書」(国立国会図書館憲政資料室所蔵)や「三木武夫関係資料」(明治大学史資料センター所蔵)の調査が必須であるが、まったく進めることができていない。 しかし昨年度、『オンライン版 矢部貞治関係文書』(丸善雄松堂、2018年)、『オンライン版 矢部貞治関係文書 補遺』(丸善雄松堂、2019年)で、矢部の中学生~大学生時代の史料群の中から、矢部の政治思想の萌芽を物語る史料をいくつか発見した。時期的には大正後期であり、「戦後初期」を対象とする本研究とは齟齬があるが、協同民主主義の淵源を詳らかにするという点では意義があるものと思われ、その翻刻・分析をおこない、順次、論文を執筆し発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の流行状況を見ると、2022年度も首都圏に出張に行くことは依然として難しいと思われる。「戦後初期」を対象とする本研究の当初の目的とは齟齬が出てしまうものの、前年度に引き続き、オンラインで史料を閲覧できる矢部貞治の大正後期から昭和初期にかけての史料群の翻刻・分析に取り組んでいく。東京帝国大学時代に関する連載論文を完結させ、大学時代の自筆ノートの翻刻を順次公表していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行中で、史料調査のための首都圏への出張ができなかったため。 次年度は、可能であれば、夏期休業中の首都圏への出張をおこないたいと考えている。また、出張ができずデジタル史料の閲覧が主となっており、現在所有しているICT機器に負担がかかり調子が悪くなってきている。そのため、パソコンやタブレット端末などを購入したいと考えている。
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Research Products
(5 results)