2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13169
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 諭 東北大学, 学術資源研究公開センター, 准教授 (90626300)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日本史 / 都市史 / 教育史 / 経営史 / 社会経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(令和4年度)は、令和2年度および令和3年度の研究成果をもとにして、仙台を中心に講堂や百貨店催事場、公園等に着目しつつ、それらの多目的な催事空間が、戦時期の機能低下や戦災を経ながらも、再建や担い手の変容を伴いつつ、戦後においても役割を維持・拡張していった側面について、都市における「多目的催事空間」の視座から個別分析をおこなうとともに、そうした記録がどのようにアーカイブされてきたのか、その視覚的系譜についても分析を進めた。 具体的には、 (1)催事主体の多義性を検討すべく、学術的な催事を中心にしていたと従来考えられてきた齋藤報恩会の社会事業の側面を新たに分析し、合わせてこうした社会事業催事が大学の講堂等の空間においてどのように展開されていったのか、学術目的に留まらない催事空間の利用状況を戦前戦後を通じて通時的に分析をおこなった。 (2)前年度(令和3年度)から引き続き、戦後における仙台の都市変容と商業施設における催事空間について、仙台の地場系百貨店である藤崎の社史資料の分析を進め、企業史料のアーカイビングとともに、地場系百貨店の催事展開についての分析を深化させた。 (3)前年度(令和3年度)から引き続き、仙台市公文書館設置準備室所蔵の関係史料を分析し、戦後の公園と商店街路の催事連動性を射程に、仙台市における公文書から催事状況の調査をおこなった。 合わせて、そもそも多目的空間の記録が残ることの意味についても考察を深め、戦前戦後を通じた、多様な催事展開と連動性、機能変容についての解明を進めた。これらの成果の一部として、加藤諭・宮本隆史編『デジタル時代のアーカイブ系譜学』みすず書房、2022年、加藤諭「戦前期斎藤報恩会における社会事業と催事助成」『東北大学史料館研究報告』No18、2023年などの共編著刊行、論文化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度(令和4年度)は昨年度に続きCOVID-19による資料保存機関のアクセス限定や、出張自体の困難さを生じたことから、研究代表者の研究基盤である仙台における研究分析を継続させる必要があった。本来分析対象都市の中心として仙台を設定していたこと、また研究代表者の所属機関である大学アーカイブズの史料へのアクセスは一定程度担保されてはいたものの、他地域間の比較分析をまとめる作業については、より総合的な分析が必要であったことから、本研究の最終年度を1年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、仙台をフィールドとした戦前、戦後を通貫する視座から「多目的催事空間」のこれまでの分析を踏まえて、地域間分析を比較し検討のまとめをおこなう。 (1)前年度までの分析成果をもとに、「多目的催事空間」の相互比較を行い、戦前から戦後を通じた各催事空間の特徴と、機能変容の全体像について明らかにする。 (2)東京における事例蓄積を豊富化すべく、「多目的催事空間」について、東京大学文書館所蔵の大講堂に関する歴史公文書を中心として、高度成長期に象徴性を帯びた学生運動、社会運動と大学講堂のイメージを相対化し、学術空間、文化催事、各種運動の場としての大学講堂の多義性を明らかにする。 (3)その上で、個別研究を架橋し、全国的視野から戦前・戦後を通貫した都市「多目的催事空間」の役割と機能を総合的に検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本年度(令和2年度)はCOVID-19下において出張等の制限があり、旅費の執行が出来なかったこと、また大学院生等のキャンパスでの活動等が制限されており、研究補助に関する業務を担ってもらう体制に一定の限界があったことから、物品費、人件費・謝金等が十分執行出来なかったことがあげられる。次年度の研究環境がコロナ禍前と同等の状況で推移することを想定し、次年度使用額の適切な支出を計画している。
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