2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13171
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 光明 (清水光明) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (90811969)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 尊王思想 / 尊王攘夷思想 / 出版統制 / 編纂事業 / 後期水戸学 / 昌平黌 / 公論 / 暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、幕末維新期に政治上で機能した尊王攘夷思想がどのように出現し、どういう経緯や形態で社会に流布していったのかという基本的な問題について、(a)「尊王攘夷」という語の形成過程、(b)尊王攘夷思想の流通過程、(c)尊王攘夷思想の変容過程の3点から再検討することを目的とするものである。具体的には、後期水戸学(会沢正志斎・藤田東湖等)はもとより、後期水戸学に前後する周辺の学知(昌平黌・吉田松陰等)や幕府の出版統制との関係等に着目する。2020年度の具体的な成果を以下に記す。 まず、拙稿「尊王思想と出版統制・編纂事業」(『史学雑誌』第129編第10号、2020年10月)を公刊した。この論文は、2019年11月に開催された史学会第117回大会公開シンポジウム「天皇像の歴史を考える」での報告を論文化したものである。「コロナ禍」のために追加の史料調査が充分にできなかった面もあるが、今後、上記の課題をさらに発展させていく上での基礎的な枠組みとアイデアは提示できたのではないかと考えている。 次に、博士論文に加筆修正を施した拙著『近世日本の政治改革と知識人――中井竹山と「草茅危言」』(東京大学出版会、2020年7月)を公刊した。本書は、懐徳堂の学主・中井竹山の主著である「草茅危言」の形成過程・受容過程および寛政改革における機能の実態・背景について、同時代の朝廷・幕府・諸藩の動向やそれに対する竹山の認識等を踏まえながら基礎的な事実関係を解明した上で、東アジアにおける比較史上の論点や展望を提示したものである。 その他、日本思想史事典編集委員会編『日本思想史事典』(丸善出版、2020年4月)に寄稿した項目「東アジアの中の近世日本」「懐徳堂」が公刊された。また、上記の拙著についての紹介記事を日本語・英語の双方で執筆した。近くUTokyo BiblioPlazaのHP上で公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やはり「コロナ禍」による影響が大きく生じた一年であった。例えば、遠方への史料調査を行うことができなかった。また、閲覧したい史料を所蔵する機関が長期間休館になる等の事態が生じた。おおよそこれらの理由から、いくつかの研究課題に着手できない状態が続いている。 それ以外にも、オンライン授業は目を酷使するため、史料や書籍をじっくりと読むことができなかった。これらのことを勘案すると、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と評価せざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、天保13(1842)年6月の出版統制の変更(一部規定の緩和)が、それ以降の民間社会や思想空間、政治過程にどのような影響を与えたのかを、拙稿「尊王思想と出版統制・編纂事業」では取り上げなかった諸事例も含めて考察してみたいと考えている。 このテーマについては、2021年10月に開催される日本史研究会大会初日の個別報告への登壇を依頼されたため、ここでその成果を公表する予定である。また、本報告は、2022年3月に発行される『日本史研究』に掲載される予定である。 その他、2021年度には、依頼された複数の原稿を完成させる必要がある。これらの仕事にも取り組む予定である。
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Research Products
(2 results)