2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13171
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 光明 (清水光明) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90811969)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 片島武矩 / 白隠 / 東照宮御遺訓 / 南渓 / 板倉勝明 / 甘雨亭叢書 / 後光明天皇説話 / 吉田松陰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、幕末維新期に政治上で機能した尊王攘夷思想がどのように出現し、どういう経緯や形態で社会に流布していったのかという基本的な問題について、(a)「尊王攘夷」という語の形成過程、(b)尊王攘夷思想の流通過程、(c)尊王攘夷思想の変容過程の3点から再検討することを目的とするものである。具体的には、後期水戸学(会沢正志斎・藤田東湖等)はもとより、後期水戸学に前後する周辺の学知(昌平黌・吉田松陰等)や幕府の出版統制との関係等に着目する。2021年度の具体的な成果を以下に記す。 まず、日本史研究会大会初日に、「近世日本の出版統制と儒学・仏教」という題目で個別報告を行った。本報告は、近世日本の出版統制の変更が儒学・仏教関連の刊本の表現・叙述・論評や流通等の幅にどのような変化をもたらしたのかを考察することで、幕末の政治運動はどのようなメディア環境で展開したのかを検討したものである。具体的には、天保13年6月の出版統制の変更に着目し、〔a〕家康に関する事蹟・偽文書(「東照宮御遺訓」等)、〔b〕「赤穂義士」に関する歴史叙述、〔c〕「幕府」の語、〔d〕後光明天皇説話等に着目した。天保13年6月以前は、〔a〕〔b〕はほとんど禁書、〔c〕〔d〕もほとんど登場しないという状況だったが、天保13年6月以降の刊本に続々と登場することを明らかにした。これらの事例は、幕末の志士や思想家・宗教者等の言動や表現・振舞いに少なからぬ影響を与えており、この点から幕末における言論と暴力の関係や「公論」形成の問題を考える手掛かりを得ることができるのではないかという点を問題提起した。この内容は、加筆修正を経た上で、『日本史研究』第715号(2022年3月)で公刊された。 その他、國分功一郎・清水光明編『地球的思考――グローバル・スタディーズの課題』(水声社、2022年3月)を刊行した(私は、全章の原稿整理を担当)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「コロナ禍」が長引くなかで、遠方での調査等は相変わらず行えない状態のままである。ただ、他方で、文献や史料を購入して読解・分析することで、いくつかの重要な事実を発見することができた。その成果が、上述の拙稿「近世日本の出版統制と儒学・仏教」(『日本史研究』第715号)である。これについては、さらにいくつかの論点や事例から議論を発展させることができそうである。したがって、現在までの進捗状況は、色々と不便な点はあるものの、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
拙稿「近世日本の出版統制と儒学・仏教」(『日本史研究』第715号)の公刊後に明らかになった論点や事例をさらに掘り下げていく予定である。いずれ投稿論文等のかたちで公刊するつもりである。その上で、フランス史等との比較についても着手していきたい。 その他、いくつかの依頼された仕事についても完成させる予定である。
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Research Products
(3 results)