2020 Fiscal Year Research-status Report
近代学問と投資の関係:林学者本多静六の投資活動とそのグローバルな連関を中心に
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20K13173
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内田 力 東京大学, 東洋文化研究所, 特任研究員 (00865165)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境史 / 人新世 / 東京帝国大学(東京大学) / 資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は新型コロナウイルス感染拡大と非常事態宣言発令により、大幅な計画変更を余儀なくされた。当初は本多静六関連の資料調査に集中する予定であったが、大学キャンパスをふくむ公的機関が部分的に閉鎖され、資料閲覧が可能だとしても制限がともなっていた。 そこで、外出を要する資料調査を回避して、まずは本プロジェクトに関連する理論研究を進めることとした。近年、注目を集める環境史の論点を把握することに努め、その成果を英語論文にまとめた。折よく歴史理論分野での英文論文誌であるRethinking Historyが人新世特集号を組むことから、これに応募し、2021年初めに「Facing the Anthropocene from the perspective of global history: Historiography, practice, and epistemological reflection」を投稿した(現在査読中)。 本多静六と同時代の思想状況についても調査成果を発表することができた。Modern Language AssociationとAssociation for Asian Studiesという2つの学会において研究発表をオンラインにておこなった。このうち、AASではパネルのオーガナイザーを務めた。これらの報告では戦間期の資本主義に対する対応状況として東京帝大セツルメントの活動をとりあげた。このほか、東京大学における学知の歴史を探究する企画のワークショップにおいて発表するなど、本多の在籍した時期の東京帝国大学をめぐって研究発表を重ねた。いずれの研究発表においても、他分野の研究者から有益なコメントを得ることができ、それは本研究課題にも重要なアイディアをあたえるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、新型コロナウイルス感染拡大と非常事態宣言発令により、大幅な計画変更を余儀なくされた。神奈川県に住んでおり、家族に介護職従事者がいることから、県外の施設での資料調査は当面回避することとした。そのため、代わりに研究課題の理論的背景や周辺状況をあきらかにして、研究発表や投稿をおこなうものとした。この新たな目標に関しては、十分な成果を上げることに成功したといえる。なかでも理論的背景については、関連する英語文献を集中的に読むことができ、「人新世」論などの環境史のテーマをフォローし、最終的に英語論文の投稿までこぎつけた。これにより、本科研課題の研究意義を大幅にスケールアップできたと考えている。また、本科研研究課題の周辺状況については、主として東京帝国大学での動向をあきらかにし、複数の研究発表をおこなった。 いずれの成果も本多の活動を理解するうえで不可欠なものであると当初より考えていたので、順序は変わってしまったが、コロナ禍でもそれなりに有意義な活動を展開することができた。以上のことから、科研の一年目である本年度は、「当初の計画以上に進展している」であったと自己評価したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の本報告書執筆時点でも新型コロナウイルスの蔓延は収束しておらず、都内では緊急事態宣言が発令されている。ただし、ワクチン接種が進んでいることも事実で、ようやくコロナ禍にも出口が見えつつあるといえる。そのため、2021年度は当面、自宅でできることを優先して、感染状況が落ち着き次第、各地での資料調査を開始することにする。 2021年度は本多静六の具体的な行動・活動に接近することを目標にする。これまでの情報収集の結果として、日本国内に関しては大分県別府と愛知県の名古屋大学周辺に絞り、両地での本多の関わりをあきらかにする方針を立てた。(なお、東京帝国大学やその演習林での関わりについてもひきつづき調査をつづける。)ひきつづき関連文献を収集して、年度内に試論的な研究発表を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大と緊急事態宣言発令のために、当初予定した資料調査が県境をまたぐ活動となるために見合わせた。そのために、計画を変更して口頭での研究発表と投稿論文執筆を主たる活動に設定したため、使用額に大きな差額が生じた。 2021年度はひとまず物品費での文献購入が中心になることを予定しているが、新型コロナウイルス蔓延の収束にあわせて、大学や公的機関での資料調査を開始する予定である。そのため、調査出張のための旅費と調査に必要な機器購入のための物品費を計上してある。 新型コロナウイルスの収束時期は2022年年始ごろを想定しているが、ワクチン普及の進展状況によっては多少前後する可能性がある。
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Research Products
(13 results)