2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13186
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
山本 春奈 大谷大学, 文学部, 助教 (00844359)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 起請文 / 神仏 / 勧請神 / 戦国大名 / 寺院 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる2020年度は、①中国・九州地方の起請文にみられる日本の主要神の整理・分析、②日本の主要神に関する研究成果および関連史料の収集、③全国の起請文に記載された日本の主要神の整理・分析を行った。 ①については、両地方において天照大神が1400年代から1500年代前半にかけて記載されるが、1500年代後半頃からほぼ見られなくなること、対して愛宕権現や摩利支尊天が1500年代後半から増加するなどの共通点を見出すことができた。ただし中国地方では地域全体で天照大神が記載されていたわけではなく、石見益田氏や安芸小早川氏関連の起請文に限定されるなど、地域内での差異も確認された。 ②については、日本の主要神に対する信仰の全国的特徴や、同信仰が中国・九州地方において広まった時期などを把握した。また、ある主要神の信仰が地方へ伝播・拡大した時期と起請文に記載されていた時期にズレがあることを確認した。よって、主要神の起請文への記載は、単なる地方への信仰拡大の結果とは言えず、起請文独自の神仏選択基準が存在した可能性があることが明らかとなった。関係史料については、起請文に限らず、主要神が当時どのような存在として認識されていたのかについて明らかにするべく、室町期以降成立の軍記・兵法書・日記などにみられる主要神関連記事を収集しているほか、中国・九州地方の自治体史などでも確認を進めている。 ③については、①を通して中国・九州両地域における共通点が複数浮上したことで、日本の主要神の記載状況を全国規模で考える必要が生じた。事例については研究開始前におおよそ収集済みであり、それらを見ると、やはり天照大神は全国的にも1400年~1500年代前半に集中していることを確認した。また、このうち越後国の事例の整理を進め、中国・九州地方との共通点・相違点を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、本年度に予定していた山口県文書館や東京大学史料編纂所での中国地方関連起請文の原本調査を見送った。ひとまず史料集を用いて史料整理・分析を続けている。 中国・九州地方の事例において、天照大神の記載が1400年から1500年代前半に限られるなど複数の興味深い点を明らかにし得たものの、その理由の解明にまでは至らなかった。また、その過程で新たに全国の状況についてもまとめる必要が生じたため、上記の理由とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度分を含めた東京大学史料編纂所等での原本調査を順次進める予定ではあるが、コロナウイルスの状況によっては再度見送らざるを得ない可能性も想定している。その場合は引き続き史料集での史料整理・分析を行っていく予定である。 また、次年度中に全国における日本の主要神の記載状況についてまとめ、論文化する予定である。その上で、北陸・近畿地域の事例が不足しているため、さらに集める必要がある。なお、当初は地域または大名家ごとにまとめる予定であったが、全国的共通性が複数認められることから、地域・大名家単位ではなく、天照大神や愛宕権現など神別にまとめる形に変更する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、本年度に予定していた史料調査を全て見送ったため。 次年度に予定している東京大学史料編纂所での調査と合わせて、同所および山口県文書館での旅費・複写費に充てるほか、史料集などの図書購入費としても使用する予定である。
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