2021 Fiscal Year Research-status Report
昭和初期 廃娼企図県における人身売買問題への取り組み
Project/Area Number |
20K13189
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
眞杉 侑里 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (30794630)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 買売春 / 公娼制度 / 私的売春 / 公娼制度廃止案 / 愛知県 / 芸妓 / 酌婦 / カフェー女給 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、愛知県公文書館・愛知県図書館を中心として調査をすすめ、『新愛知』『名古屋新聞』といった地方新聞、行政文書、『愛知県報』などの史料収集につとめた。また、史料収集と平行して収集史料の情報整理および分析をすすめ、下記2点の研究成果を得た。 ①愛知県における公娼制度廃止案の分析 地方新聞記事を中心史料として、1934(昭和9)年1月に突如登場した愛知県廃娼案を分析する。同案は、名古屋市中村遊廓の貸座敷組合が発起人となり提唱した実験的試みといえるもので、中村遊廓・娼妓を旭楽園・園妓と改称。売春営業を前提としつつも、「園妓はサービスガールである」という建前を掲げ、売春の有無については園妓との交渉次第とした。売春営業を専業とする公娼制度から離脱することにより、営業形態の刷新を図るものであったと判断できる。 ②名古屋市域における売春営業の変遷と分布 明治~昭和戦前期にかけて名古屋市域に点在した売春営業について、営業の経年変化を検討。法規による制約の裏で存在した売春営業の状況を経時的・地理的に復元した。本成果の肝は、従来は別個に論じられていた公娼・私娼の両者を包括し、同一に扱った点にある。両者を総合して検討することにより、より実際の状況に近づけて売春営業を論じることが可能となる。 以上、①において県下の公娼廃止論の基調を明らかにし、②で廃娼論の背景となった類似業種の状況を明らかにしたといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目・2年目の史料収集の成果が、順調に研究成果へと結びついている。ただし、本研究課題の中心となる「人身売買」という観点については、①の検証過程においてその比重が低かったことが明らかとなっており、対象史料の検討や分析視角の検討を要するため。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに愛知県――特に名古屋市における売春営業の実態と公娼制度との相互関係について、ある程度明らかになってきた。今後は、実態解明を継続するとともに、愛知県議会・名古屋市議会など行政側の議論について対象を広げ、理論面の検討を行っていく。
|
Causes of Carryover |
初年度に加えて、本年度も新型コロナウィルスの関係で、急遽史料調査を取りやめにした等、調査にかかる交通費・宿泊費が少なかった。 次年度については、年度の早い段階から史料調査を進め、また研究論文投稿など活発な発表活動を行う。
|