2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on Interactions of Petitions with Policey for the Social Order in Early Modern Germany
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20K13213
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 繁子 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20706288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 魔女裁判 / 請願 / ポリツァイ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初は夏季にドイツに渡航・滞在し、一次史料の調査・収集を行う予定であったが、これがパンデミックにより中止となったため思うように収集が進んでいない。部分的にはマックス・プランク研究所のK.ヘルター教授、マインツ氏古文書館長ドブラス氏らの協力により、デジタル化された形で一部史料を入手できた。これらの史料のうちマインツ選帝侯領における1660年代ディーブルク市の史料については、過去筆者が扱ってきたケースではあったが、請願人の働きと役人の職掌などを掘り下げて改めて分析した。その結果、在地役人と参事会など地域エリート間の強い紐帯が魔女裁判の進行に影響し、それに対する抗議という形で請願が起こってきたことが明らかとなった。管区長・宮廷顧問会などさらに上のレベルでの禁令は、そうした地域における協力体制の有無やそれらとの交渉を前提にその実効性を考える必要がある。以上については11月に西洋史研究会大会(Zoom開催)において発表した。この成果は同研究会の会誌『西洋史研究』に論文として発表予定である。
また魔女犯罪を他の犯罪類型の中に位置づけるという研究目標については、二次文献の渉猟・精読をすすめている。涜神、嬰児殺害といった犯罪類型、また「女性の犯罪」という観点からの先行研究を整理し、その一部は上記投稿予定の論文に反映される。犯罪史研究においては「規律化」「抑圧」という観点から「紛争解決」「社会的調整」という観点にシフトしてきていること、犯罪行為の告発など民衆の協力が近世司法を支える柱であったこと、告発を勧奨する当局と告発をためらう(「裏切者」)住民の葛藤など、魔女迫害史においても検討すべき課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していたマックス・プランク法史研究所への研究滞在・文書館での史料収集も延期となったため、史料収集が思うように進んでいないため。文書館との連絡をとりつつ、一部史料はデジタル化されたものを入手できたが、やはり現地での調査が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度末には在外調査が再開できることを期待しているが、それが難しかった場合には二次文献や刊行史料を用いた史料分析も視野に入れていく。その場合、領邦マインツの史料についてはある程度目星が立っているので、帝国ポリツァイ条令やファルツ、バイエルン等の代表的な領邦との比較分析も有効と思われる。請願そのものは刊行されていないものが多いが、請願に関わる規範的史料(請願提出の規定、請願を処理する当局の機構、請願の受け手となる司法・行政の機能エリートのテキスト等)も二次文献を手掛かりに収集を進めていく。
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Causes of Carryover |
国内外の出張費用が掛からなかったため。翌年度分も出張がかなわない時期が続くと思われるので、オンライン会議用のカメラ・マイク等周辺機器の充実など物品費に適切に使用していく。
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Research Products
(5 results)