2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on Interactions of Petitions with Policey for the Social Order in Early Modern Germany
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20K13213
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 繁子 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20706288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 魔女裁判 / 請願 / ポリツァイ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、今年度も新型コロナウィルスの蔓延によりドイツでの文書館史料調査を行うことができなかったが、引き続き二次文献の資料収集を進めた。また、デジタル化された史料が入手できた分については、その分析も行った。その成果として、論文「請願と交渉―16・17世紀の魔女裁判をめぐるinfrajustice」(『西洋史研究』新輯第50号)をまとめた。この論文では、魔女裁判の開始を求める請願が多数見られるマインツ選帝侯領の都市ディーブルクの事例を中心に、魔女裁判をめぐる交渉の総体をinfrajusticeとして分析した。そこではとくに請願人と中央当局との仲介者となる地方役人の役割に着目した。 マインツ選帝侯領では地方行政を担う管区長職は貴族によって占有されていたが、重要管区にはその時々の選帝侯の血縁が任命されることが多い一方で,他の管区には地縁のない者か,土着ではあっても宮廷と近い関係にある貴族が任命された。管区長職の任命と配置は選帝侯の支配形成と密接に関係していたことが明らかになった。他方、非貴族出身で地方の司法・行政を担うケラーは主に在地から選ばれ、管区をまたいだキャリアを築くものはごく一部にとどまった。共同体居住者の中から選ばれたシュルトハイス・ツェントグラーフ・ファウトなど下位役人は司法の領域では違反者の逮捕拘禁や徴表の精査などの警察的役割を担ったことを明らかにした。 こうした地縁に強く結びついた下位の在地役人と、地縁のない上位役人の態度は必ずしも一貫しておらず、彼らの間の不一致が請願人にとっては交渉の余地だったと言える。地方の下位役人がこうして請願実践において果たした役割が一定程度見えてきたが、ポリツァイ規範の形成との具体的なつながりはまだ見いだせていない。そこで、今後は地方役人への統制に関わるポリツァイ規範に分析対象を広げていく必要がある
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も予定していた史料調査を行うことができなかった。これまで研究蓄積のあったマインツ選帝侯領についてはおよその史料状況について知見があったため、史料のデジタル化依頼を出して一定程度は新しい史料について分析することができたが、ファルツ選帝侯領については来年度に回さざるを得なかった。また魔女以外の犯罪・風紀違反に関しては二次文献はある程度渉猟できたが、文書館での一次史料の収集は進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度もコロナやウクライナ情勢による渡航の制限について状況が読み切れないので、現地での史料調査ができないことを仮定する。主に地方役人の職掌統制に関わるポリツァイ条令、また女性による嬰児殺害という犯罪ジャンルについての請願について、二次文献から得られる史料状況をもとに、文書館とコンタクトをとり、入手できた史料の範囲で研究をまとめていく。
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Causes of Carryover |
20年度に引き続き、海外渡航が叶わなかったため、支出額が少なくなった。今年度は感染状況を鑑みつつ、夏季に難しいようなら春季にドイツに渡航し史料調査・研究報告を行う予定である。
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Research Products
(4 results)