2023 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Interactions of Petitions with Policey for the Social Order in Early Modern Germany
Project/Area Number |
20K13213
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小林 繁子 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20706288)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 魔女裁判 / 請願 / 名誉棄損 / 帝国最高法院 / 帝国宮内法院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世国家形成の過程で進展した、規律化と臣民の自発的な働きかけという表裏一体の動きを明らかにすることを目指した。パンデミックによる渡航制限により研究計画の変更を余儀なくされつつも、下記のような成果を得た。 2020年度にはデジタル化史料を入手し、マインツ選帝侯領における1660年代ディーブルク市の史料について、請願人の働きと役人の職掌などを掘り下げて2021年度には論文「請願と交渉―16・17世紀の魔女裁判をめぐるinfrajustice」(『西洋史研究』新輯第50号)をまとめた。地縁に強く結びついた下位の在地役人と、地縁のない上位役人の態度は必ずしも一貫しておらず、彼らの間の不一致が請願人に交渉の余地を作ったことを明らかにし、地方の下位役人がこうして請願実践において果たした役割を解明できた。 他方、領邦レベルでの史料調査が難航したことから2022年度以降には比較的アクセスの容易な帝国裁判所史料の調査を開始した。2022年度には日本法制史学会大会シンポジウムにおいて帝国最高法院における魔女裁判ケースを扱い、2023年度に論文として発表した(松本尚子編『伝統社会の司法利用―東西比較の可能性』(2024)大阪大学出版会)。2023年度には帝国宮内法院の裁判史料の渉猟を開始し、最初の史料調査の成果を2024年1月に比較国制史研究会において発表した。帝国最高法院との比較を含め、帝国宮内法院の魔女事例についてはまとまった研究はほぼ皆無であり大きな手ごたえを感じている。2024年度中には研究ノートをまとめ発表する予定である。臣民は領邦を飛び越えて帝国裁判所への提訴が可能であることをかんがみれば、領邦レベルでの支配形成は、神聖ローマ帝国における重層的な裁判制度という大きな枠組みにおいて理解されうるという見通しを得たことは大きな成果であった
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Research Products
(2 results)