2021 Fiscal Year Research-status Report
Government of the seventeenth-century eastern suburbs of London through the coordination of the authorities
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20K13222
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
菅原 未宇 東海大学, 文学部, 准教授 (10645310)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリス / 都市統治 / 中間層 / 災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、その統治に関してこれまで本格的研究がなされてこなかったロンドンの東部郊外を対象に、地域住民とロンドン市の諸団体による貧困や災害といった様々な問題への対処を分析することで、統治の具体相とその変化を明らかにすることを目的とする。令和3年度は、地域エリートの人的関係の結節点としての学校に着目し、イートン校の同窓生について分析を行い、ロンドンに拠点を置く東インド会社の商人の子弟などが、同じ学校に通うことで人間関係を築いた可能性を明らかにすることができた。その成果の一端は、中国四国歴史学地理学協会2021年度大会西洋史学部会において「文法学校から見た近世ブリテンの複合性」と題して発表した。今後はロンドンの統治エリートが同窓関係で紐帯を築いていた可能性をさらに究明するため、ウェストミンスタ校やマーチャント・テイラー校、セント・ポール校、ハイゲート校、チャーターハウス校などほかの学校についても名簿の収集と分析を行いたい。また令和3年度では、令和2年度から引き続き、ロンドン市政だけでなく周辺郊外地域についても治安判事として統治に関わったと考えられるロンドン市の法律顧問官について、17世紀を対象に、彼らの遺言書から人間関係の把握を行った。その結果、17世紀ロンドンの郊外統治への関与が深い何人かの人物をリストアップすることができた。海外調査が行えた際に、彼らの活動について史料の渉猟と分析を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、次の三つの段階を設定している。第一に、ロンドン東部郊外を管掌する諸権力について、その構造を把握することである。第二に、諸権力を担う人物の詳細について史料に基づき可能な限り再構成し、複数の権力を繋ぐ媒介者の存在を明らかにすることである。第三に、それら媒介者の活動を追究することで、どのような状況の下、権力間の協働あるいは対立が生じるのか、時系列的な変化も意識しつつ動的に分析することである。このうち、一点目については、すでに行った調査により確定済である。二点目に関しては、英国公文書館が提供する電子化史料のカンタベリ大主教管区裁判所検認遺言書の収集と分析を進めることで、治安判事として郊外統治で枢要な役割を果たしていたと考えられるロンドン市法律顧問官とその周囲の人間関係について、17世紀に至るまである程度の把握が完了した。ただ、令和2年度に引き続き令和3年度も海外調査が行えなかったことにより、法律顧問官以外の統治エリートについての史料収集・分析は十分に進んでいない。三点目についても、ロンドン大火発生後の統治エリート間の不和の事例についてはすでに解明したが、より日常的な問題対応のあり方を究明するためには、ロンドンの文書館が所有する裁判記録の収集・分析が不可欠であり、それが行えていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度前半は、日本で入手可能な学校名簿やリヴァリ・カンパニ史料の分析から、法律顧問官以外に17世紀ロンドンの郊外統治に関与した人物について可能な限り再構成していく。またイギリスの入国制限が解除されたため、夏季に渡航し、それら統治に関与した人物の情報や活動内容について、現地での史料収集・分析を通じて明らかにしていきたい。年度後半にも可能であれば現地での調査を行いたい。仮に、感染症の状況が悪化し、再度の渡航制限となった場合は、年度前半に引き続き、国内の大学図書館が所蔵するマイクロ史料の収集・分析を進めることとしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、計画していた海外調査が出来なかったこと、その結果、予定していた研究員を雇用したデータベース構築を進める環境が整わなかったにより次年度使用額が生じた。次年度請求分と合わせて、主に海外調査のための費用として用いる。
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Research Products
(1 results)