2023 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代中・後期の外来系土器による畿内の手工業生産拠点と列島内外の地域間交流研究
Project/Area Number |
20K13240
|
Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
中野 咲 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 主任研究員 (00470279)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 古墳時代中期 / 土師器 / 外来系土器 / 山陰東部系土器 / 韓式系土器 / 地域間交流 / 手工業生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
古墳時代中・後期、畿内の王権は、畿内の内部領域に朝鮮半島から最新の手工業技術を移植し、窯業生産や鍛冶生産、馬匹生産など専業的な手工業生産拠点を運営した。地方勢力は、個別にこの生産拠点にアクセスし、最新技術を移入した。このような手工業生産拠点をめぐる地域間交流のうち、朝鮮半島→畿内や、畿内→地方の実態は、実証が進んでいるが、地方→畿内については不明な部分が多い。本研究では、畿内の手工業生産拠点出土の列島内外の外来系土器の系譜や出土の脈絡を検討し、手工業生産拠点が列島内外との活発な交流によって運営されていたことを明らかにし、畿内の王権による手工業生産拠点の経営戦略や地方勢力の活動の実態に迫る。 このような研究目的のもと、2023年度は畿内に隣接する丹波・但馬・因幡・伯耆地域および播磨地域の古墳時代中期の土師器の技術系統の整理を行い、畿内周辺の土器様相の把握に努めた。この結果、因幡・伯耆を故地する山陰系の土器製作技法が但馬・丹波を通じで畿内に伝播し、畿内から播磨へ伝播したこと、広い範囲でこの技法が共有されたことが明らかとなった。また、中期後半にこの技法が衰退した後は、各地で特徴的な地域色が発現することも明らかとなった。このような地域色の発現の背景には、各地の開発の盛行があると判断された。 また、大和地域の南郷遺跡群において、東伯耆地域に限定される土器が集中して出土することを指摘し、同遺跡と東伯耆地域の地域間交流について検討した。 さらに、大和地域の手工業生産拠点における列島内外の外来系土器を集成し、手工業生産拠点が多様な地域との交流によって成り立っていることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響から、令和2~4年度まで遠方への資料調査が困難であったため、調査の進捗は全体として遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
西日本においては吉備地域および西部瀬戸内地域、東日本においては三河・遠江・駿河地域の資料調査を進め、各地の土器様相の把握を行い、畿内出土の外来系土器の故地の探索を進める。また、外来系土器出土の脈絡について考察を行い、成果をまとめる。
|
Causes of Carryover |
資料調査の遂行が遅れており、旅費が執行できなかったため。
|
Research Products
(5 results)