2021 Fiscal Year Research-status Report
江戸時代における藍顔料の再現および化学分析に基づく製造法の最適化
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20K13246
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
松原 亜実 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (20808232)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 藍 / ジャパンブルー / インディゴ / 顔料 / 染料 / 天然染料 / インジゴ |
Outline of Annual Research Achievements |
世界で古くから普及していた藍色の代名詞が“Japan blue”となったのは、江戸時代に日本を飾った藍の発色が美しかったからに他ならない。しかし現在の日本人がイメージする“Japan blue”は18世紀前半に日本へ伝えられたプルシアンブルー(通称ベロ藍、フェロシアン化第二鉄)であり、本来の藍から置き換わっている。伝統的な藍染めが現代に至るまで継承されているにも関わらずベロ藍が日本の代名詞的なカラーイメージとなったのは、葛飾北斎をはじめとする浮世絵の影響が大きい。本研究では、江戸時代のさまざまな文献に概略のみ残されている記載内容から具体的な手順を再構築し、透明度が高く発色も優れている藍の顔料を製造する。そして、江戸時代の人々を魅了した美しい顔料化した藍を蘇らせ、より強く鮮明なカラーイメージを伝えられる古典絵画の復元へ貢献することを目的とする。 藍顔料の製造と並行して、古画の藍を科学調査し、古典的な目視による色味や発色の確認に加え、数値で江戸時代の藍を定義化する。保存修復という観点だけでなく、文化の継承まで考慮すると、文化財は時代考証に基づいたオリジナルに限りなく類似した素材で模写を行い、保存することが望ましい。本研究でデジタルと製造法の両面から色材を提示することにより、古画の想定復元模写制作などを理想的な形で行うことが可能となる。 2021年度は2020年度に引き続き過還元化抽出の置き換え試験を実施した。用いる石灰の量により抽出可能な藍泡の濃度に差が出ることが確認された。また蓼藍を育成しその生葉や茎を用いて沈殿藍抽出試験を行なった。収穫した蓼藍を茎ごと一定の大きさに裁断し、水に浸し抽出液に炭酸ナトリウム・石灰をそれぞれ加え攪拌し、藍を沈殿させた。どちらも沈殿藍が集積したが、石灰を加えることで沈殿する藍の量に明確な差が生まれることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は藍が色材に用いられている江戸絵画の科学調査を行う予定であったが、COVID-19の影響で大学美術館を含む他美術館での調査が困難となった。抽出試験の実施の予定もずれ込んだため「やや遅れている」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は藍華の顔料抽出の生成方法を検討し、より純度の高い抽出意見を実施する。沈殿藍の組成や技法の置き換え再現試験を行い、より質の高い藍の抽出を試みる。また集積した沈殿藍を濾過し、顔料としての最適化を試みる。 同時に藍を用いて江戸時代に描かれた肉筆画(紙本・絹本に描かれた絵画)、及び浮世絵版画の色材調査を行う。藍は褪色が起こるため、作品調査は藍が認識できる江戸時代の作品に限定する。調査手法は非破壊で調査が可能なマイクロスコープによる粒子観察、蛍光エックス線分析装置による元素分析、近赤外可視光反射スペクトル分析、FTIR分析を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度、2021年度とコロナ禍により実験に費やす時間を十分確保できなかったことや、科学調査を行えなかったことにより、本年度に予算を繰り越すこととなった。2022年度では出張を含めた調査や藍抽出試験を重点的に実施する。
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