2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13250
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
荻山 琴美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 飛鳥資料館, アソシエイトフェロー (40834239)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 群青 / 緑青 / 顔料 / 文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、青色の顔料である群青が緑色へ変化してしまう現象「群青の緑青化」の要因が資料の置かれる保管環境にあると予測し、その環境要因の解明を目的としている。まず初段階として、群青の緑青化が確認される資料の環境調査から、その要因を検証していく必要がある。 初年度となる2020年度は、国内外における先行研究の文献調査と翻訳作業を進めた。また、群青の緑青化が疑われていた奈良県内の仏像を対象に、可視分光分析・顕微鏡観察を実施した。可視分光分析では色を反射率のスペクトルにより可視化することができる。既知の試料データのスペクトルと比較することで、色料の推定に繋がる非破壊分析である。しかし今回対象とした仏像の彩色上には、護摩たきや煤の付着があり、明瞭なスペクトルの取得は困難であった。顕微鏡観察では粒子の状況が確認できた。 次年度以降は、文献調査・分析のみならず環境調査を進める方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外視察が不可能となったうえ、上半期は調査へ行くことが厳しかったため。 また、調査対象としていた仏像の追加調査を実施したが、想定通りにデータを得ることができなかった。よって、調査方法と対象資料について再検討する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、初年度に実施した調査の結果をまとめる。彩色調査に用いた分析手法は、今後実施する室内実験においても用いる分析方法なので、分光分析の課題やその結果から見える色料の特徴を分析する。また、先行研究から見える課題について考察し、本研究にも随時反映する必要があると考える。 基本的に現地での調査が進められていない傾向にあるので、今後は現地での環境調査を積極的に進めていくことが必要と思う。 就職に伴い勤務地が大きく変わったので、群青の緑青化がみられる文化財が近隣地域にあれば、調査対象資料として追加したいと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、国外視察が延期となったため、当初予定していた旅費が使用できなかった。また、当初初年度に実施を予定していた調査を実施できていないことから、機器購入費が使用できていない。 次年度は調査を進めるためにも機器の購入をする。また、奈良県への出張の頻度が増え、国内での旅費の使用額も増加することが予測される。
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