2021 Fiscal Year Research-status Report
Swelling-Shrinking Behavior of Japanese Paper used for Restoration of Cultural Property.
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20K13251
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
金 旻貞 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60755784)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 和紙 / 装コウ文化財 / 伸縮 / 収着 |
Outline of Annual Research Achievements |
装コウの修理工程に用いる水が本紙(和紙)に吸着されたとき、紙繊維への吸着と吸収が同時に起きる。その後、繊維の吸脱湿によってシートの形態変化が現れる。シート収縮の原因となる収着挙動については繊維の伸縮変化に起因することはよく知られているが、実際に修理に用いられる手漉き和紙シートの変化については把握した研究はほとんどない。本研究では、実際に修理に使われているシートから検証を行い、形態変化の原因と対策を明らかにすることを目的とする。 その背景を踏まえて本年度は保水度試験を外部機関で実施することを予定していたが、COVID-19の影響で依頼試験が制限されており、それに伴って研究が中断している。 一方で、昨年度に引き続き和紙を収集し、材料特性のデータベースの構築作業を進めた。本年度は、昨年度に続き文献および研究論文を参考に、収集した手抄き和紙の収着等温線を検討することができた。また、各和紙の基礎的な力的特性を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
保水度試験が実施できなかったため大幅に遅れている。 収着等温線から相対湿度依存性の検討は予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は現状を踏まえて計画の見直しを図る。現段階での保水実験の実施の見込みがないため研究遂行の評価指標を再検討する予定である。また、種々の和紙および複層構造の和紙の水分収着挙動について、段階的湿度調整したもの(23%、33%、54%、75%、94%)を観測し、その収着等温線の解析より考察する。具体的には下記の項目に従い研究を実施する。
1.収着等温線を調べる:前年度と同様に坪量の異なる同一工房製造の和紙(楮、ミツマタ、雁皮等)を、所定の相対湿度で調湿し、その湿度での平衡含水率を測定し、収着等温線を求める(継続)。次に、二層構造のシートも実施する(新規)。 2.紙質の基礎的及び力的特性の測定:各紙の基礎的性質として、坪量、繊維観察、厚さ、密度などはJIS法に準じて行った。また和紙の一部を単繊維に離解し、繊維表面について走査電子顕微鏡による観察を行った。填料については元素分析を中心に材料分析を行った(継続)。 3.昨年度に続き、試料例を増やし汎用データベース構築していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、COVID-19の影響で紙産業技術センターにて予定していた試験ができなかったことと開催予定だった東アジア文化遺産保存学会が延期になったこと、また文化財科学会等の学会がオンライン開催になったため、旅費が不要になったためである。 なお、現段階での紙産業技術センターの実施の見込みがないため、研究遂行ができるよう研究計画を再度検討している。
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