2022 Fiscal Year Research-status Report
Swelling-Shrinking Behavior of Japanese Paper used for Restoration of Cultural Property.
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20K13251
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
金 旻貞 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (60755784)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 和紙 / 装こう文化財 / 収着 |
Outline of Annual Research Achievements |
装こう技術を用いた書画文化財修理の中で、水は欠かせない材料の一つである。修理に携わる技術者は、料紙の材料の特性、すなわち原料、製造方法や加工方法の時代性、紙の触感、使用実績からの安全性等、多岐にわたる要素を総合的に理解し、その技術的経験をもとに水による料紙の伸び縮みといった形状変形をコントロールしながら修理作業を進めている。しかしながら、修理作業の難易度は、対象となる作品に用いられている紙質の特性ごとに大きく異なる。 本研究では、より安全で安定した修理作業の実現のために、手漉き和紙のシートについて科学的分析を行なう。各手漉き和紙の吸水率が異なるところに着目し、水の収着メカニズムを検証する。また装丁という多層構造にした場合、これまでの伝統的な作業についてどのように工夫されているのかを科学的に裏付けすると共に、シートの伸び縮みといった形状変形を抑制する方法を設定する。 1.装丁における和紙の使用事例について先行研究及び修理報告書を調査した。装こう文化財が他分野の文化財と大きく異なるのは、作品(本紙)に装丁部分が加わって形を成していることである。装こう文化財の形態は大きく3種類(軸装・幀装・帖装)あり、其々の形態に合った和紙を選択し修理が行われている。和紙は各産地によって持ち味ともいえる紙質の特徴があり、それを生かして修理に使われていることから、修理報告書の調査では選択した和紙の種類と装丁の形態との関連性について重要視した。また和紙工房を訪問し、原料や製造方法などの聞き取り調査を行った。このように資料と材料を集め、データベースの構築を行っている。 2.紙質の評価については、各紙の基礎的な性質を、坪量、繊維観察、厚さ、密度などはJIS法に準じて行った。 3.収着等温線に関する実験については、実験データから再現性が取れず実験環境の改善が必要であることが確認できた。再検証を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の試験場の使用が出来なかったため大幅に遅れている。ただし、和紙のデータベースは計画通りに進めており、十分な成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行の評価指標を再検討する予定である。料紙の物性試験では基礎的なデータを加える予定である。キーワードで定義すると、強靭さの評価、pH値、ぬれ性(接触角)、ろ水度の評価である。 なお、和紙の材料特性のデータベースについては、昨年度に続き、資料例を増やし汎用データベース構築していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、一部の試験ができていなかったためことと調査や学会などの変更により旅費が不要になったためである。 次年度は、開催が持ち越された国際研究会を北海道大学で開催する予定である。その他にも積極的に学会で発表を行う予定である。また、当初予定していた研究打ち合わせ等が、コロナ禍のためにキャンセルになったがWeb会議システム等を使って体制を再調整したので、2023年度には対比的に分析及び打ち合わせすることができる。
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