2020 Fiscal Year Research-status Report
博物館事業に注目した地方企業家フィランソロピーの展開に関する歴史的研究
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20K13254
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大木 真徳 青山学院大学, コミュニティ人間科学部, 准教授 (00839516)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 博物館史 / 地方博物館 / 地方企業家 / フィランソロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度には、主に研究資料の収集・分析に取り組んだ。本研究は、国内各地の博物館を対象とした事例調査を主体とするものである。新型コロナ感染症の拡大の影響で、現地調査が実施できなかったものの、所属機関の図書館等を利用して、調査対象館が刊行した館報等の資料、および、二次資料を中心に、資料の収集に鋭意取り組み、その蓄積に成果があった。あわせて、収集した資料の分析・検討にも着手し、調査対象館の基本情報の整理・把握にも進展がみられた。とりわけ、調査対象館の設立経緯について、設立者の経歴等を含め、その構造的な整理が進んだことは、今後の研究展開の基盤形成という点で、研究初年度にふさしい成果であったといえる。 なお、具体的な調査対象は、本研究申請時の予定通り、下郷共済会鍾秀館(長浜市)・鎌田共済会郷土博物館(坂出市)・藤井斉成会有鄰館(京都市)の3館とし、いずれについても着実に資料の収集・分析を進めることができたが、なかでも鎌田共済会郷土博物館については、当初想定していたよりも、館による刊行物を中心とした資料の収集に成果があがり、事例として取り上げることの意義を再認識するに至った。 また、2020年度には、共著書を1件執筆した(山本珠美・熊谷愼之輔・松橋義樹編『社会教育経営の基礎』学文社, 2021年)。同書では、「企業との連携・協働」(pp.152-165)という章の執筆を担当し、社会教育の領域での企業と行政の連携・協働について主に論じた。この執筆作業を通して、社会教育の領域における企業フィランソロピーのこれまでの展開をあらためて整理できたことは、地方博物館の発展と企業家フィランソロピーの関連を明らかにするという本研究目的の妥当性や意義を再考するという点で大きな意味のあるものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、2020年度には、調査対象の博物館について現地調査を実施する予定であった。具体的には、図書館や文書館での資料調査や博物館関係者へのインタビューの実施を検討していたが、新型コロナ感染症の拡大により、長距離移動の伴うフィールドワークや公共施設での調査に制限が生じたことを受け、現地調査は2021年度以降に持ち越すこととした。 いっぽうで、所属機関の図書館等を利用した資料収集では着実な成果が得られ、2021年度以降の現地調査に向けた準備という点においても、確かな研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度以降の研究では、2020年度に実施できなかった現地調査に順次取り組んでいく予定である。具体的には、7月~9月の期間に、まずは、下郷共済会鍾秀館(長浜市)・鎌田共済会郷土博物館(坂出市)の2館について、現地の図書館・文書館等で一次資料の収集に取り組みたいと考えている。この2館については、2020年度までに実施した資料収集により、すでに二次資料等の蓄積が進んでおり、現地での一次資料の収集にも円滑に取りかかることができる状況にある。この調査の進展具合に応じて、1月~3月の期間には、関係者へのインタビューを含めた追加の現地調査をすることも検討している。 また、現地調査と並行して収集した資料の整理・分析も進め、2020年度までの成果も踏まえ、その結果を論文としてまとめていく。執筆した論文は、全日本博物館学会『博物館学雑誌』をはじめとする博物館学領域の学会誌への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の拡大の影響を受け、研究開始当初に予定していた現地調査が実施不可能となり、そのための旅費や、調査で使用するノートパソコン等を購入するための物品費、インタビュー調査で得られた音声データの反訳のための費用等を用いることができなかった。 2021年度以降は、複数の博物館について現地調査を順次実施していく予定であり、2020年度に使用できなかった旅費や物品費等の費用は、その調査実施のために充てることになる。
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Research Products
(1 results)