2020 Fiscal Year Research-status Report
法をめぐる多種民族誌ー現代インドの自然物への法人格付与を事例として
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20K13282
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中空 萌 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 講師 (60790706)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法人格 / 自然 / 多種民族誌 / 法人類学 / インド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ガンジス川など自然の存在物に法的な人格を認める、現代インドの一連の裁判と関連する国家プロジェクトへの法人類学的な調査を通じて、自然環境と社会の法がいかに相互構成しているのかを明らかにすることである。 初年度である本年度は、現代インドでなぜ、どのようにこうした特殊な法の形式が選ばれたのか、特定の国家法がつくられ、運用されるプロセスを民族誌的に明らかにするために、ウッタラーカンド高等裁判所で、<1>自然への法人格付与に関する裁判の議事録の分析および<2>公益訴訟(インドにおける現代型訴訟)の参与観察を行う予定であった。しかし新型コロナウィルス感染症の影響により、現地調査が実現できなかったため、ガンジス川の訴訟にかかわった主任弁護士、判事、原告などの関係者へのオンラインインタビューを実施し、前年度までに収集した裁判資料などの分析を行った。 そしてその成果を自然物の法人格訴訟をめぐる現代人類学、環境法、法哲学、科学哲学などの理論研究の成果と照合し、NatureCulture誌に論文"Making Law of/with Nonhumans: The Ganges River is a Legal Person"、文化人類学誌に展望論文「法の生成の人類学へ向けて」(高野さやかと共著)を投稿した(いずれも採録決定済)。また日本工業所有権法学会、現代人類学研究会などにおいても成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は新型コロナウィルス感染症の影響により、インドでの現地調査を行うことが叶わず、参与観察データを収集することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルスをめぐる状況が改善された場合、来年度には本年度予定されていたウッタラーカンド高等裁判所における公益訴訟の参与観察およびガンジス川をめぐる国家プロジェクトの民族誌的調査を行う。それが困難な場合には、引き続き現地の感染状況や調査関係者の置かれている状況に十分に配慮しつつ、オンラインでのインタビューを継続したい。また自然物の法人格訴訟をめぐって、西洋中世の動物裁判やヒンドゥー神に法人格を認めてきたインドの文脈について文献研究を進め、現在の事例の固有性を明らかにすることに注力したい。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウィルス感染症の影響により、インド・ウッタラーカンド州で予定していた2ヶ月の現地調査が実現できなかった。そのためその旅費分を次年度に持ち越し、仮に状況が好転した場合、本年度予定していた分の調査を行うものとしたい。
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Research Products
(6 results)