2022 Fiscal Year Research-status Report
プル型の行政調査の法的統制:プッシュ型の調査との比較
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20K13315
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中尾 祐人 同志社大学, 政策学部, 准教授 (00825771)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 行政調査 / 米国法 / 行政法 / 情報法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はプル型の行政調査(行政機関の求めに応じて被調査者が情報の提供を行う形態の調査活動)に対する具体的な統制法理を定立し,個人のプライバ シーに十分な配慮が保障されるとともに,行政に対して予測可能性を提供することで行政活動に必要十分な調査を行うインフラを整備することである。本研究は,当該目的達成のために,米国におけるプル型の調査に関する連邦最高裁判決および学説,さらには実務上の運用について,プッシュ型の行政調査(行政機関 が自ら動いて情報を取得する形態の調査活動)と比較して検討を行うものである。令和4年度においては,我が国において行政調査がいかなる訴訟形式で争われ,いかなる法的統制を受けているかを検討した。具体的には,種々の行政機関が行なっている行政調査に関する裁判資料に当たり,実務上の法の運用と問題点を明らかにした。その結果,我が国においては,行政調査の違法性が正面から争われる訴訟が極めて少ないこと,プッシュ型の行政調査とプル型の行政調査が峻別されないまま一体的に運用がなされており,かつその統制法理も明確に確立されていないことが明らかとなった。また,米国と比べ,強制調査,任意調査の区別が厳密には行われておらず,その点にも課題が見られた。そのため,あえてプル型の行政調査に限定して調査を行うインセンティブが行政の側には存在せず,より侵害性の高いプッシュ型の調査が多用されているのではないかと推察された。これらの研究成果は,いずれまとまった形で公表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数多くの裁判資料に当たることで,我が国の行政調査の法的統制の実態について一定の見通しを持つことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,これまでに検討した米国の行政調査に対する統制法理との比較を行うことにより,我が国の行政調査制度の改善策について検討を行う。
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Causes of Carryover |
海外研究へ行けなかったことが原因である。 次年度においても海外研究に行けない可能性があるが,国内の裁判資料にたることにより実務実態を明らかにするため,昨年度に比べより多くの国内研究出張を行う予定である。
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