2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K13361
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鶴ケ野 翔麻 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (00779514)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 担保 / 所有 / 譲渡担保 / フランス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Gijsbersの著作と比較検討されるCrocqの著作の読解・分析を行なったことで、両者の比較を通じて担保と所有の関係をめぐる議論を多面的に捉えられるようになったことがまず重要な成果である。両者を対比させながらの本格的な分析はこれからの作業であるが、これまでの取り組みから現段階においても、所有権担保という仕組みを成り立たしめる多元的な構造を捉える視座の重要性を指摘することができる。担保を考える以上、この視座の重要性は自明であるが、そこに存在する多元的な構造が所有権担保の法的構成の捉え方とも密接に結び付いていることがここでは重要である。たとえば、CrocqとGijsbersは、所有権担保と倒産手続との関係について対極的な理解を示すが、この対立がそれぞれの法的構成の捉え方にも反映されていると考えられる。もっとも、こうした視座は、それ自体、さらなる検討を踏まえてより精緻なものになるように更新されるべきものである。 そのほかに、前年度から継続している作業で一定の進展が見られたものとして特に挙げるべきは、前述の多元的な構造とも関わるが、担保と資産(patrimoine)の関係をめぐる議論の検討である。倒産隔離を可能とする資産の分割が認められる場合であってもその帰属主体の信用力が乏しくなれば、その分割そのものを否定しようとする力が様々な形で作用する。本年度は、資産の分割を否定し、その単一性を回復させようとする実質的な考慮を探索し、これと所有権担保の構造を規定する考慮との関係を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のCrocqの著作の読解・分析に予想以上の時間を要したこと、新型コロナ感染症の流行の影響によってフランスにおける資料の調査・収集を実施できなかったことがその理由である。これらの結果、分析のための視座の獲得にも時間を要し、日本法の検討の開始も遅れている。もっとも、その間に、フランス法の検討、特に担保と資産の関係をめぐる議論の検討について一定の進展を見ることができた。これによっていくらかその遅れは解消されていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の多元的な構造をまずは意識しながら、CrocqとGijsbersの議論の応接を具体的に再構成した上で、それを基点として、フランス法における担保と所有をめぐる議論の総体を捉えることが次に特に取り組むべき課題となる。これと同時並行で進めることを予定していた日本法の検討についても本格的に取り掛かることにしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、ひとつは、当初予定していたフランスでの資料の調査・収集が実施できず、旅費等を支出する機会がなかったことによる。その分を、フランス法関連の書籍を購入するために充てることになったが、それでも余りが生じた。翌年度にもフランスでの資料の調査・収集を予定しているが、近時の円安傾向により旅費等の増加が予想されるため、次年度使用額はそこに充てる予定である。もうひとつは、若手研究における独立基盤形成支援(試行)による支援を受けているためである。この部分は、引き続き、主にフランス法データベースを利用するために継続的に支出することが予定されている。
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