2021 Fiscal Year Annual Research Report
造礁サンゴを用いた環境復元から解明する中東地域の気候変動と社会情勢の関係
Project/Area Number |
20K13447
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Research Institution | KIKAI institute for Coral Reef Sciences |
Principal Investigator |
渡邉 貴昭 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所, 研究部門, 特別研究員 (00852310)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サンゴ / オマーン / アラビア半島 / Sr/Ca比 / Ba/Ca比 / 酸素同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の中東地域の不安定な社会情勢には、気候変動の寄与が指摘されている。本地域では気候要素の観測記録が不足しており、乾燥度や砂嵐を伴う地域風(シャマール)の変遷を議論することは難しかった。そこで本研究は、本地域で採取された造礁サンゴ骨格を代替指標とし、これらの気候要素の復元を目指した。 気候要素を高精度に復元するために、新たな海水の酸素同位体比の算出法やバリウム・カルシウム比の分析方法を確立した。海水の酸素同位体比は、塩分や降水量の指標として用いられる。従来の算出手法における誤差要因を精査し、複数の造礁サンゴ骨格試料を用いて海水の酸素同位体比を算出することでその信頼区間を見積もることに成功した(Watanabe & Pfeiffer, 2022, Zinke et al., 2021)。また、河川水やダストに多く含まれるバリウムは造礁サンゴ骨格中に取り込まれることが知られており、骨格中のバリウム・カルシウム比を分析することで洪水や砂嵐の頻度と規模を復元できる。本研究では、誘導結合プラズマ発光分光分析計に超音波ネブライザーを接続することで測定感度を増幅させ、バリウム濃度を高精度で分析することに成功した(Watanabe et al., 2021)。 さらに、人為的要因による現在の温暖気候と自然要因による過去の温暖気候を比較することで、現在の中東地域の環境が特異であるかどうかを検証した。オマーン国にて採取された造礁サンゴ骨格を用いて、現在と同程度に温暖であった12万年前の気候要素を復元した。その結果、当時は現在の記録で確認されるよりも冬季モンスーンが強く、地域風も強かったことが示唆された。一方で、現在のアラビア半島は極めて乾燥した気候であり、砂漠が広がっている。アラビア半島の砂漠化の要因と合わせて、冬季モンスーンおよび地域風を変化させる駆動力の解明が必要となる。
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Research Products
(7 results)