2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K13643
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡野 泰樹 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (10817505)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 監査 / 保証 / 統合報告 / 統合報告書 / 非財務情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度に当たる2020年度は、統合報告書に付与されている多様な保証が共有すべき理論的基盤の明確化に向け、文献収集を行った。ここでは特に国際監査・保証基準審議会(IAASB)から公表されている、拡張された外部報告(Extended External Reporting:EER)の保証に関する文書の整理を行っている。IAASBによる拡張された外部報告の保証に関する一連の取組みは、サステナビリティ報告やESG報告、公的部門・非営利組織のパフォーマンスも含む広範なものであり、統合報告書の保証のみに焦点を当てたものではないが、統合報告書の保証で課題になる、定性的情報・将来指向情報への対応が検討されており、今後の統合報告書の保証実務に影響を与えることが予想される。また、文献収集の過程で、職業会計士による保証と非職業会計士による保証の相違の一つとして、職業会計士による保証が、厳格な職業倫理を基礎とした上で実施されていることに着目した分析を行い、その一部を論文として執筆している。さらに、以上の文献収集に加え、統合報告書に対する保証の実態を明らかにするために、統合報告書に対する保証報告書の収集も併せて行っている。ここでは、統合報告先進国として知られている、南アフリカの上場企業(ヨハネスブルグ証券取引所上場企業)を対象に保証報告書の収集を行い、その分析を行っている。その結果、南アフリカでは、報告組織から独立している外部の保証主体のみならず、報告組織内部の保証主体を利用した保証が実施されていることが明らかになっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合報告書に付与されている多様な保証が共有すべき理論的基盤の明確化に向けた文献収集に加え、実際に行われている統合報告書に対する保証の分析に向けた保証報告書の入手も問題なく実施できていることから、おおむね当初の研究計画通りに進められていると考える。ただし、2020年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、学会参加等(対面)を通じた、他の研究者等からの本研究に関する意見聴取はほとんど実施することができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目に当たる2021年度は、引き続き、統合報告書の保証に影響を与える可能性のある基準・指針等の公表に注意しつつ、保証報告書の収集とその分析を進め、学会等での研究報告、及び論文の執筆を行っていく。具体的には、初年度に収集した南アフリカの上場企業が公表している保証報告書の分析結果の研究報告と論文執筆に加え、統合報告書の保証に関連する非財務情報の保証に対して制度的な進展が見られる欧州諸国の企業に焦点を当てた保証報告書の収集を行う。また、他の研究者等からの意見聴取は、引き続き新型コロナウィルス感染拡大の影響が見込まれることから、Web会議ツール等の利用を検討し、実施していく。
|
Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり、学会・研究会等(対面)へ参加する機会が得られず、使用予定であった旅費を使用することができなかった。これが次年度使用額が生じた主な理由である。2021年度も引き続き新型コロナウィルスによる影響が見込まれるため、学会・研究会等への参加で予定していた他の研究者からの意見聴取を、オンラインでの実施に切り替えることなどを検討している。これに伴って、旅費として計上していた費用は、謝金等に振り替えて使用することを検討している。
|