2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K13661
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
川端 千暁 関西学院大学, 商学部, 助教 (30844443)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 監査人の法的注意義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の実績としては、単著論文「職業的専門家としての正当な注意と監査基準の不備の解消 : 米国における1961年から1978年までの史的分析」を雑誌「商学論究」に紀要論文として投稿を行い公表をした。同論文は、Porter(2014)の期待ギャップの枠組みにおける「監査基準の不備」が解消されなかった事例を史的研究から明らかにしたものである。 国内の学会において2回の発表を行った。日本監査研究学会の全国大会では、「日本における監査人の懲戒処分の実態調査 -官報データを利用した1948年から2019年までの調査-」の発表を行った。本論文は、日本における財務諸表監査の行政による規制の特徴を実態調査により明らかにすることを企図している。本論文は同学会の論文誌「現代監査」に投稿したが却下されたので、論文の研究方法と適合した雑誌への投稿を検討している。 さらに、国際会計研究学会では、「財務諸表監査における合理的注意(reasonable care)の研究」の発表を行った。本論文は、英国のBrydon報告書の合理的注意への批判を受けて、監査基準と合理的注意の監査人の意思決定における役割を経済学的なモデルを前提として概念的に説明したものである。 また英国の議会が公表した報告書「future of audit」の翻訳が完成し、2021年度の6月には同報告書の翻訳を公表する予定である。本報告書は、現在英国政府(特にBEIS省)がすすめている監査制度改革について英国議会(特にBEIS委員会)が検討を行ったものである。本報告書では、監査の機能や役割が与える影響を検討している点で本研究と関連がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスによる感染症の影響により、本計画も申請時の予定から変更する点が多い。特に実地調査や海外における論文発表、ワークショップへの参加、資料へのアクセスなどの点で変更が起こるため、できる限りこのような日程は計画の後半に行うこととした。 さらに、申請時には不明な点も多かった英国の制度改革が本格化したことにより、大きく監査制度もパラダイム・チェンジが起こる可能性がある。したがって本研究は、米国における監査人の注意義務を扱うが、その最終的な目的が日本への有用なインプリケーションを示すことであるため、英国における制度改革も議論の前提として組み込む必要が出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、歴史資料及び判例資料を用いた経験的研究及び経験的研究の結果を踏まえたモデル研究を行う。 2021年度の研究の推進方策としては、モデルの部分の雑誌投稿を行うとともに、経験的研究の雑誌投稿を継続的に行っていく。2020年度に学会で発表した論文の修正と修正論文の投稿を行っていく。
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Causes of Carryover |
申請時から現在までに発生した新型コロナウィルスによる感染症の影響により、本計画も当初の予定から大幅な変更を行った。したがって、研究費の配分が大幅に異なることとなった。 次年度使用額と当該年度以降分として請求した助成金を合わせた使用計画については、現地調査には行くことができないものの、研究資料の購入および2020年度までの研究成果の投稿・出版の費用等にあてるとともに、一部は次年度以降に実行可能性のある現地調査の費用に繰り越すこととする。
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