2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14526
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
但木 謙一 国立天文台, アルマプロジェクト, 特任助教 (30726435)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 銀河天文学 / 電波天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の究極的な目的は、遠方宇宙にある楕円銀河の祖先となるような銀河を観測し、どのようにして楕円銀河へと進化するのかを解き明かすことである。 今年度はアルマ望遠鏡を用いて、赤方偏移6(およそ130億年前の時代に相当)の明るいサブミリ波銀河G09.83808の観測を行い、そのデータの解析・論文発表を行なった。
G09.83808は手前の銀河による重力レンズ効果を強く受けており、その放射が8-9倍増光して観測できる点に着目し、今回の観測では、アルマ望遠鏡のバンド5とバンド8の受信機を用いて、静止系205ミクロンにある窒素の輝線放射([NII]205)と静止系88ミクロンにある酸素の輝線放射([OIII]88)の観測を行った。近年のアルマ望遠鏡の観測によって、赤方偏移6を超える遠方銀河からの酸素や炭素の輝線放射の検出が報告されるようになったものの、窒素の輝線放射はこれらの放射に比べて弱いため、クエーサー 2天体を除き検出できていなかった。今回、重力レンズ効果とアルマを用いた十分に深い観測を組み合わせることによって、窒素と酸素の輝線放射を12σ以上の有意性で検出することに成功した。窒素と酸素の電波強度の比は電離ガス中の金属量の良い指標となっており、近傍銀河におけるスケール則を遠方宇宙に適用することで、この銀河におけるガスの金属量が太陽近傍の50-70%に相当していることがわかった。
この研究成果についてはTadaki et al. 2022, PASJ, in pressとして、筆頭著者として論文を発表することできた。また2022年日本天文学会春季年会では記者発表を行い、アルマ望遠鏡のホームページでもウェブリリースを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤方偏移6にある銀河G09.83808の研究においては、アルマ望遠鏡の観測データのイメージング、重力レンズのモデリング、光電離モデルとの比較などを行い、データ取得後1年ほどで結果をまとめ、論文発表を行った。またこの天体のフォローアップ観測においても、アルマサイクル8期でプロポーザルを提出し、グレードAで採択されている。
またG09.83808に限らないアルマサイクル8期での観測に関しては、本研究課題に関連するものとして、他にも3つのプロポーザルが採択されており、おおむね順調に進展していると評価できる。
また国内の多くの研究会・セミナーで本研究課題に関する内容で招待講演をさせていただくことができたのは良かったが、COVID-19の感染拡大の影響もあり、今年度は一度も国際会議で研究成果を発表することができなったことは残念である。
|
Strategy for Future Research Activity |
赤方偏移6にある銀河G09.83808のアルマサイクル8期でのフォローアップ観測は2022年4月に完了したため、今後はこのデータの解析を行う予定である。このプロジェクトでは新たに静止系122ミクロンにある窒素の輝線放射([NII]122)、静止系145ミクロンにある酸素の輝線放射([OI]145)、静止系158ミクロンにある炭素の輝線放射([CIII]158)の観測を0.5-0.7秒角の分解能で行い、すでに観測した[NII]205と[OIII]88の観測データと組み合わせることで、このスターバースト銀河におけるガスの物理状態を明らかにすることを目的としている。具体的には[NII]122/[NII]205光度比から電離領域にあるガス密度、[OI]145/[CII]からPDR領域にあるガス密度、[OI]145/[OIII]88から中性ガスの占める割合などを空間的に、または分光学的に分解して調べることができると期待している。これほど複数の輝線が検出されたこれまでの例はz=4にある1つの銀河だけであり、z=6の銀河でこれら全ての輝線を検出することができれば、インパクトのある成果になると期待している。
また今後は国際会議で研究成果の発表を行いたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、全ての国際会議がキャンセルされたことが主な理由である。翌年度は国際会議への物理的参加が可能になると見込んでおり、そのための旅費や解析PCの購入に使用する計画である。
|
Remarks |
今年度に得た研究成果を日本天文学会2022年春季年会にて記者発表を行い、アルマ望遠鏡のホームページでもウェブリリースを行った。
|
Research Products
(8 results)
-
[Journal Article] Detection of nitrogen and oxygen in a galaxy at the end of reionization2022
Author(s)
Ken-ichi Tadaki, Akiyoshi Tsujita, Yoichi Tamura, Kotaro Kohno, Bunyo Hatsukade, Daisuke Iono, Minju Lee, Yuichi Matsuda, Tomonari Michiyama, Tohru Nagao, Kouichiro Nakanishi, Yuri Nishimura, Toshiki Saito, Hideki Umehata, Jorge Zavala
-
Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed
-
[Presentation] ALMA observations of a submillimeter galaxy at z = 6 I: Detection of nitrogen2022
Author(s)
Ken-ichi Tadaki, Akiyoshi Tsujita, Yoichi Tamura, Kotaro Kohno, Yuri Nishimura, Bunyo Hatsukade, Hideki Umehata, Daisuke Iono, Jorge Zavala, Kouichiro Nakanishi, Yuichi Matsuda, Minju Lee, Tomonari Michiyama, Tohru Nagao, Toshiki Saito
Organizer
日本天文学会2022年春季年会
-
-
-
-
-
-