2020 Fiscal Year Research-status Report
グリーンな細胞凍結保存プロセス設計のための細胞内水ダイナミクスの解明に関する研究
Project/Area Number |
20K14662
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 弘明 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員 (50847994)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バイオ熱工学 / 誘電分光 / 水分子ダイナミクス / 細胞凍結保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の成果を以下に挙げる. (1) 細胞懸濁液の誘電スペクトル取得に関する検討: 同軸プローブを用いた周波数領域反射法による誘電分光で細胞内水分子ダイナミクスの測定を行うため, 直径1 mmの同軸プローブを下から試料に接触させる構造の試料容器を用いることで, 約10 μlの試料体積の細胞懸濁液に対して誘電スペクトルを取得できるようにした. (2) 細胞内水分子のダイナミクス評価のための誘電スペクトル解析方法の検討: 細胞懸濁液および懸濁液の分散媒のみの誘電スペクトルをそれぞれ独立に取得し, これらに対して懸濁液の誘電率に関するBruggeman-Hanaiの関係を適用して懸濁液中の細胞の誘電スペクトルを求める方法を確立した. Bruggeman-Hanaiの関係を用いるためには誘電率のほかに, 懸濁液中の細胞の体積分率を算出する必要があるが, 共焦点レーザー顕微鏡を用いた観察と画像処理により細胞の体積分率を算出するための方法について検討した. Bruggeman-Hanaiの関係により得られた細胞の誘電スペクトルに対し, Debye型緩和の重ね合わせのモデルを用いて分子ダイナミクスに関連する誘電緩和時間を求める方法を確立した. (3) 脱水された細胞内の水分子のダイナミクス評価: 細胞凍結保存では, 凍結過程で細胞が適度に脱水されることが重要であり, 保護物質がこの脱水に影響を与えると考えられている. そこで, ヒトT細胞性白血病由来のJurkat細胞を複数の浸透圧のスクロース水溶液に懸濁し, 25 °Cにおいて誘電スペクトルを取得することで, 脱水した細胞内の水分子のダイナミクスを調べた. この結果, 脱水された細胞内では水分子ダイナミクスの分布が変化し, 遅いダイナミクスの水分子が多くみられることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は研究実施計画に記載のほぼ全ての事項を達成し, 常温における細胞試料の誘電スペクトル取得とその解析方法を確立したため.
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Strategy for Future Research Activity |
常温から氷点下の幅広い温度範囲において誘電スペクトル取得を行うことができるように測定システムを発展させ, これを用いて様々な保護物質溶液に懸濁した細胞内の水分子ダイナミクスの観測を行い, この結果と細胞内凍結率を比較することで, 凍結保護のメカニズムの解明および, よりグリーンな保護溶液による細胞凍結保存の実現に寄与する知見を得る.
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Research Products
(4 results)