2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of coupled numerical simulator for describing processes within rocks from fracture generation to long-term change of fracture permeability
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20K14826
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
緒方 奨 大阪大学, 工学研究科, 助教 (50868388)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱・水・応力・損傷・化学連成数値シミュレーション / モデルの統合化 / 高レベル放射性廃棄物の地層処分 / 亀裂の生成・進展 / 化学現象(圧力溶解) / 不連続体モデル / 岩盤内亀裂 / 透水特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、力学試験に基づき生成する亀裂の内部構造を予測可能な数理モデルを構築し、亀裂生成解析モデル、熱・水・応力・化学連成解析モデルと統合することで亀裂生成からその後の化学現象による長期透水性変化までを一気通貫に解く連成数値シミュレータを開発する。また、このシミュレータを用いて地層処分時の岩盤の透水特性の長期予測評価を行う。 2020年度は、本研究で最終的に完成予定の熱・水・応力・損傷・化学連成数値シミュレータの基盤となる計算システムの構築及び性能検証を行った。 具体的には、まず、①亀裂生成解析モデル、②亀裂内部構造を予測する数理モデル、③熱・水・応力・化学連成解析モデルをシームレスに統合することに成功した。2020年度は力学実験に基づく②の数理モデルの新規開発が困難であったため、既存の簡易理論モデル【Hertz (1882)】で代替した。①のモデルに連続体・不連続体ハイブリッド解析モデルであるFDEMを、③のモデルに亀裂内の流体挙動や岩石実質部-亀裂間の相互作用を解く不連続体モデルであるDFNモデルを用いた。なお、今回構築した計算システムでは、亀裂生成・進展後の応力場の時間変動を考慮していないため、今後改良が必要である。 次に、構築した計算システムを実装した解析コードを用いて、高レベル放射性廃棄物の地層処分を想定した長期予測解析を実施した。解析結果より、廃棄体処分空洞掘削に伴い生成・進展した無数の亀裂の内、圧力溶解という化学現象が生じる亀裂では透水性が大幅に減少し、その他の亀裂では透水性にほとんど変化がないことが確認された。この様な亀裂生成・進展形態等に依存した化学現象による局在的な亀裂の透水性変化挙動は、既存のシミュレータでは全くとらえることの出来なかった画期的な成果である。これらの結果より、構築した解析コードの性能とその有用性を確認することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生成した亀裂の内部構造を予測可能な数理モデルを力学試験に基づき構築し、亀裂生成(損傷)解析モデル、構築した数理モデル、熱・水・応力・化学連成解析モデルをシームレスに統合した計算システムに基づく革新的な熱・水・応力・損傷・化学連成数値シミュレータを新たに開発する。また、そのシミュレータを用いて、地層処分時の岩盤の透水特性の長期予測評価を行う。 2020年度は、当初実施予定であった、亀裂の内部構造を定量評価するための実験と実験結果に基づく数理モデルの構築については新型コロナウィルス感染拡大の影響により実施できなかったが、その代わりに、2021年度に構築予定であった熱・水・応力・損傷・化学連成数値シミュレータの基盤となる計算システムを前倒しで構築することに成功した。また、構築した計算システムの高い性能・有用性を確認することが出来た。したがって、総合的には、研究は概ね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、下記の1)、2)の研究課題を順に遂行する予定である。 1) 生成した亀裂の内部構造を予測する数理モデルの開発 花崗岩と泥岩についてそれぞれ10本程度供試体を作製し、圧裂試験を実施し亀裂を生成するとともにマイクロフォーカスX線CTを用いた撮影と画像解析により亀裂の内部構造(亀裂の開口幅・接触部面積・屈曲度)を定量評価する。さらに、圧裂試験で生成された亀裂に対し垂直拘束圧載荷試験を行い、垂直拘束圧による亀裂の閉合量と接触部面積の変化をそれぞれ、レーザー変位計、感圧紙を用いて測定する。次に、得られた実験結果に基づきモデルを検討する。具体的には、亀裂開口方向のひずみと亀裂閉合方向の応力を用いて物体の損傷度Dを定義した上で、接触部面積をDの関数として定式化する。Dのみで定式化が困難な場合は屈曲度も変数に加える。開口幅は接触部面積と相関性が強いことから、開口幅も接触部面積と同様の変数を用いて定式化する。 2) 熱・水・応力・損傷・化学連成数値シミュレータの開発と検証 2020年度に構築済みの連成計算システムを拡張し、亀裂生成・進展後の岩盤内応力場の時間変動を考慮可能とした上で、1)で構築した数理モデルを導入し、所望の熱・水・応力・損傷・化学連成数値シミュレータを構築する。1)で実施したものとは別に圧裂試験を実施し得られた亀裂に対し、高温高圧条件で連続的に透水試験を実施すると同時にX線CTで撮影し、鉱物溶解・沈殿等による亀裂構造・透水性の時間変化を観察する。この圧裂試験による亀裂発生から連続透水試験までの一連のプロセスの再現解析を実施し、開発したシミュレータの妥当性を検証する。その後、日本原子力研究開発機構瑞浪深地層研究所・幌延深地層研究センターが行っている現場での空洞掘削実験や透水試験の再現解析を実施し、実現場における現象に対するシミュレータの再現性を検証する。
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Research Products
(9 results)