A study on the methodology of consensus building through narrative-formed communications

2020 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 20K14848
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 川端 祐一郎 京都大学, 工学研究科, 助教 (80814996)
• Project Period (FY): 2020-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 物語 / 移入 / 合意形成 / サスペンス性 / 物語型コミュニケーション / ナラティブ

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、土木計画の実践において市民の円滑かつ健全な合意形成に資する知見を得ることを目的として、物語型コミュニケーションの効果を実証するとともに、物語とはそもそもどのような情報を指すと理解すべきなのかを明らかにすることを目的とするものである。具体的には、多数のテキスト素材に対しテキストマイニングの技術等を用いた特徴評価を行い、それらを読者に提示して「物語移入」の深さを計測することで，どのような形式的特徴を持つ情報が「物語型コミュニケーションによる態度変容」に効果的であるのかの実証的解明を目指す。
2020年度においては、物語文のサスペンス性が読者の移入に及ぼす効果の実証を行った。本研究の中核となる仮説は、「不確実な未来へ向かう時間の流れの追体験」こそが物語（への移入）の本質であるとともに、その不確実性が最終的に解消されることで物語に対する満足や納得が得られるというものである。2020年度に行った文献レビューによって、ごく限られた数でしかないが、1980年代に「サスペンス性」が物語の「物語らしさ」を作り出すことを主張する研究があり、この「サスペンス性」の概念は、本研究が想定する「不確実な未来へ向かう時間の流れ」に近いものである。既往研究では、サスペンス性が物語への移入に与える効果は検証されていなかったため、2020年度に本研究において、それを検証するため1000名の参加者を対象とする心理実験を行った。看護にまつわる物語エピソード100本を使用し、それぞれ文中の各部におけるサスペンス性を質問紙により評価した上で、サスペンス性の高さや推移と移入度の関係を分析した結果、サスペンス性の高い物語文ほど高い移入を催すことや、サスペンス性が前半で高く後半で下がる構造が有効であること等が明らかになった。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

「研究実績の概要」に記載したとおり、当初想定した仮説に近いかたちの仮説を検証する心理実験を行い、当該仮説を支持する結果が得られている。

Strategy for Future Research Activity

今後は、実験結果の論文としてのとりまとめや、「サスペンス性」概念のさらなる探求、及びさらに大規模なテキストを用いた分析を試みる予定である。

Causes of Carryover

2020年度内に実施した心理実験において、当初想定を上回る金額が必要になったことが主な要因である。当該実験は2020年1月に実施され、期待した結果が得られており、2021年度にはその論文化やさらなる分析作業を行うものであり、研究期間全体の計画に照らして問題はないと考えられる。