2021 Fiscal Year Research-status Report
イタリア国家統一および遷都前後における都市周辺部の住居群の変容に関する研究
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20K14941
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
會田 涼子 近畿大学, 建築学部, 講師 (40734067)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イタリア / 近代都市改造 / 都市拡張 / 住居 / ヴィラ / 区画整理 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は新型コロナウイルス流行の影響で、海外の中長期滞在が困難となったため現地調査を見送った。昨年度に引き続き、文献収集と文献による分析、考察を中心に進めた。 具体的には、ローマ国立文書館、カピトリーノ歴史文書館所蔵の課税用不動産登記台帳と地図、イタリア軍事地理院所蔵の都市図などを収集した。 今年度は、本研究の計画調書では記載していなかったフラミニオ地区(quartiere)カンポ・マルツィオ地区(rione)を対象とした。旧市壁が高低差のある個所にあたるため、道路整備による影響が大きいと考えられたためである。この地区では、既存のヴィラやそれに付随する道が新たな区画割りの形状を規定し、既存の建物は新しい道路に対して新たなファサードを持つものとそうでないものがあることがわかった。さらに区画整理によって規定される各ヴィラや集合住宅の敷地形状から、ローマ近郊の住宅地によくみられる鋭角の角に正面ファサードの意匠を施す設計に至る理由の一つではないか、ということがわかってきた。それにより、ヴィラの敷地と建築規模による意匠の傾向を分析することによって、19世紀から20世紀初頭のヴィラの形態がどのように決定されたを考察できる指標として考えられた。 また、昨年度に引き続き、派生研究として日本の都市計画における西洋技術の受容という観点から、専門雑誌を史料とした情報の流通に関する研究を進めた。具体的には『都市公論』誌において、西洋関連の記事の掲載の変遷について、記事内容、原典の特定、抜粋箇所、翻訳方法などを網羅的に精査し時期によって原典の種類や掲載方法に大きな傾向があることがわかってきた。特に、20世紀イタリアの都市計画及びテリトーリオ(領域)史研究にとっても重要な影響を与えたレイモンド・アンウィンについて、翻訳の際に都市計画の手法が特に抜粋されていた点などが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度は新型コロナウイルス流行の影響で、当初計画していた渡航を延期し、現地調査に代わる研究計画の修正を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、より精密な文献収集を行い、入手した文献の読解、史料の整理、データベースの作成を引き続き行い、各ヴィラの平面形態と土地区画の変化との相関の分析に加えて、ヴィラの使用方法やヴィラ文化についても、新聞、雑誌、日記などの記録文書から分析する方策である。現地調査は中長期滞在が可能になった時点で、研究の進行に必要となる調査(現物確認、写真撮影、動画撮影、実測調査など)を行う。 派生研究として進めている日本の都市計画雑誌における西洋に関する情報の流通に関する研究については、これまで精査した内容をまとめて論文化を行う。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナウイルスの流行で、海外での中長期滞在が困難となったっため、計画していた渡航を延期したことから、実施調査や資料の送付などにかかる経費を支出しなかったため。
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