2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K15259
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 大貴 京都大学, 工学研究科, 助教 (10845019)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メソイオン / ねじれ / 超分子 / 芳香族性 / π共役系 / 非ケクレ分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
非ケクレ型分子は形式的に結合に関与できない電子を複数有するため、多くの場合に開殻性を示し、様々な機能性分子として利用されてきた。一方で、非ケクレ型であるにも関わらず開殻性を持たない電子構造として、正電荷と負電荷を有する双性イオン型構造も考えられる。このような分子は魅力的な物性が期待できるが、その体系的な研究はほとんど行われてこなかった。本研究では合成が容易かつ安定なメソイオン型共役系化合物の創製、調査を行ってきた。 本年度はまずテトラメチレンメタンの1つの炭素を窒素で置き換えた等電子体構造を有するアザジペンゾペンタレンの設計・合成を行った。NMR測定および量子化学計算の結果から、対応する炭化水素化合物と比較して大きく非対称化した電子構造や、シクロペンタジエニル環に由来する強い反芳香族性を明らかにした。 さらに、当初想定しなかった成果も得られ始めている。具体的には、安定ラジカルをトリプチセン骨格に縮環させることで空間的に相互作用させたジラジカルを合成したところ、スピン状態に大きく依存した光学特性を示すことが明らかとなった。この二量体は室温で一重項状態と三重項状態が約1:1の割合で共存するほど小さなスピン間相互作用を示すにも関わらず、スピン依存的な吸収バンドを示すことを理論・実験の両面から明らかにした。過渡吸収測定により、共存する一方のスピン状態を選択的に励起できることや、励起状態ダイナミクスがスピン状態に依存して異ることも明らかにした。詳細な検討の結果、空間を介した絶妙な重なりに由来して小さなスピン間相互作用とスピン特異的な電子遷移が実現されていることが示唆されている。これはスピン-物性相関という新たなアイデアを構造有機化学に持ち込むことができることを示唆しており、この観点からさらなる展開が期待できる。
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Research Products
(13 results)