2021 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルバイオロジーで拓く統合的ストレス応答を標的とするTh17分化制御薬開発
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20K15415
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
濱田 良真 徳島大学, 先端酵素学研究所, 助教 (90805772)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HTS / ISR / Th17 / EAE / ATF4 / 乾癬 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘルパーT 17(Th17)細胞産生性インターロイキン17(IL-17)やIL-23が関節リウマチや実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の病因であることが報告されており、治療薬の標的としてTh17分化制御の重要性が示唆されている。本研究では北里大学の天然物由来のライブラリーからTh17分化阻害剤を同定し、Th17が病因の疾病に対する治療薬の基盤を作ることを目標としている。 細胞が様々なストレスに曝されるとeIF2αのリン酸化を介した統合的ストレス応答(ISR)が誘導される。ISRキナーゼにはHRI,PKR,PERK,GCN2の4つが知られている。HalofuginoneはGCN2-eIF2α-ATF4を活性化、Th17分化を阻害、EAEの病態スコアを改善することが報告された。しかし、その他のキナーゼを介した強力なTh17分化制御は未解明であるため、GCN2以外のISRキナーゼを介したTh17分化阻害を目的とした。 ISRレポーター細胞を用いたHTSより、ISRを活性化するNigericin(Nig)を同定した。NigによるISR活性化は、ミトコンドリアストレスを感受したOMA1-DELE1-HRIによって活性化されていることを明らかにした。マウスの脾臓やヒトの血液からCD4+ T細胞を抽出し、Th17へ分化させた。対照群はIL-17分泌が検出されたが、分化誘導時にNigを共投与した群ではIL-17の分泌が抑制された。IL-17分泌が病因のEAE病態への寄与を解析した。対照群ではEAE病態が進行するのに対し、Nig処理群ではEAE病態が改善された。また、IMQクリーム塗布により、IL-17病原性の乾癬誘導実験においても、Nigにより病態が改善された。Nigの標的を同定するとこで、詳細な作用機序解明を可能にし、Th17関連疾患の治療薬開発の基盤となりえることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者はハイスループットスクリーニング(HTS)によりNigericinがISRを活性化できることは発見していた。本研究の1-2年目の研究実施計画は、1)ヒトの血液からCD4+ T 細胞を抽出し、ヘルパーT 17(Th17)細胞に分化誘導する。対照群とNig処理群のインターロイキン-17分泌を検出することで、Th17分化制御への寄与を解析する。2)マウスに実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を誘導する。対照群とNig処理群のEAE病態スコアをモニターすることでTh17関連疾患への寄与を解析する。3)北里大学においてNigの多部位に多種置換基を付与した誘導体を合成し、HTSによって活性をチェックする。その後、標的探索プローブを付与した誘導体を合成し、Nigの標的を質量分析で同定する、という計画であった。1)、2)については研究実績の概要に記載した通り達成できた。3)については3年間通年の計画であるが、1年目に誘導体合成、および活性チェックを行い、次の誘導体合成までを想定していたが、新型コロナウイルス拡大により研究環境が制限されたため達成できなかった。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、研究環境が大幅に制限されたが、1-2年目の計画は概ね達成でき、作用機序の一部をタンパクレベルで解明、また、Th17(IL-17)細胞病原性の乾癬を対象にNigの有効性をin vivoで示すデータを得ることができたため、進捗状況を「おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
①ハイスループットスクリーニング(HTS)で同定したNigericin(Nig)の統合的ストレス応答(ISR)活性化メカニズムの概要を捉え、②マウス、およびヒトのヘルパーT 17(Th17)細胞への分化制御を阻害できること、③実験的自己免疫疾患(EAE)において同化合物が病態予防できることを明らかにしてきた。さらに、イミキモドクリーム塗布による乾癬誘導モデルにおいても、Nigは病態改善することを明らかにした。しかし、これら①②の現象と③の発見はパラレルな現象であるため、病態モデルにおけるISRの状態や役割は不明なままである。本研究で発見したNigによるISR制御メカニズムは、ミトコンドリアストレスを感受したOMA-DELE1-HRI(ISRキナーゼ)が翻訳開始因子eIF2αとその下流のATF4を活性化した。Nigは未成熟なT(CD4+)細胞のTh17への分化を抑制した。そのため、今後の研究の推進方策はTh17分化時、乾癬誘導時のATF4の発現を解析することでTh17分化(IL-17分泌)へのISR(特に、ATF4)の関与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、京都府(京都産業大学)で開催予定であった小胞体ストレス研究会が中止となった。そのため、研究会参加のための旅費が使用されなかった。化合物Xの標的因子を同定するため、誘導体を作成し、HTSを繰り返す計画であった。この計画において、誘導体の合成を北里大学に依頼する計画であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、北里大学との研究打ち合わせが想定していたスケジュール通り行えなかったため、合成された誘導体購入費用、研究打ち合わせのための旅費等が使用されなかった。そのため、次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した研究費と合わせて、病態モデルマウスにNigericinを投与し、Nigericinのin vivoにおける病態スコア改善を検討する予定である。
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Research Products
(4 results)