2021 Fiscal Year Research-status Report
新奇酵素反応による細菌のプロテオスタシス制御:我々とは異質な酸化ストレス適応戦略
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20K15446
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Research Institution | Hyogo Prefectural Institute of Technology |
Principal Investigator |
今井 岳志 兵庫県立工業技術センター, その他部局等, 主任研究員 (30785241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオフィルム / ペルオキシダーゼ / 酸化還元 / 抗酸化 / ヘム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では各種の酸化ストレスに対して当該の酵素がどのような役割を果たすかを多角的に評価し、細菌の多様化に繋がった、我々とは異質な酸化ストレスへの適応戦略を明らかにすることを目指している. 本研究計画は①酵素反応における当該酵素の諸性質解明、②オーソログの活性確認と破壊株作製、③破壊株においてタンパク質のアグリゲーションを定量、④進化生物学的な位置づけの解明、の4つの実施項目に分かれている. 今年度は①において活性中心付近のアミノ酸をターゲットとしたポイントミューテーションを実施した.その結果、ヘム近傍に位置するチロシン残基をフェニルアラニン置換した際に当該の酵素が過酸化タンパク質に対するペルオキシダーゼ活性を失うことが明らかとなった.さらに、このチロシン残基を置換した株ではバイオフィルム形成能に異常が生じることも明らかとなり、当該の活性がTasAなどのバイオフィルムを構成するタンパク質の恒常性維持に寄与しているという仮説を支持する結果が得られた.すなわち、バイオフィルム中のタンパク質は大気と接するために酸化変性を受けやすく、ペルオキシダーゼ様活性により変性を抑制する機能を持つYjbIが破壊された場合、バイオフィルム形成・維持に異常が生じる可能性が示唆された.また、④に関連して、このチロシン残基の保存状況を確認したところ、相同性30%以内のほとんどのYjbIホモログにおいて当該の残基が保存されていることが示された.さらに、②および③に関連して、抗酸菌型の精製YjbIにおける過酸化タンパク質の重合抑制能を評価したところ、B. subtilisの場合と同様に重合を抑制することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では特に①が大きく進展し、活性中心付近のポイントミューテーションから、YjbIがin vitroで示す活性が実際にB. subtilisのフェノタイプに影響を与えることが示された.これは当初の仮説を支持する結果であるため、順調に研究計画が進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き①を重点的に進める予定.特に当該酵素の電子供与体は不明点が多く、チオールなどのいくつかの酸化還元電位が低い生体分子から電子を受け取ることが可能か評価予定.そこから生理的な条件における電子供与体の特定を試みる.また、これらの結果から明らかになった反応機序から、典型的なその他のヘムタンパク質とは異なり、YjbIが重合抑制効果を示す理由を探る.
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Causes of Carryover |
年度最終月の購入予定物品の一部で見積もりに時間がかかったため、翌月での使用となり次年度使用額となった.
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Research Products
(3 results)