2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K15458
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
黒原 崇 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 任期付研究員 (90865776)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 錯体 / RNA選択的分解 / ノンコーディングRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、RNAの分解による機能制御を低分子化合物を用いて実現することである。 既存の医薬品の多くは、生体内にあるタンパク質を標的としているが、この標的タンパク数の減少が創薬研究における課題となってる。 今後はタンパク質以外の生体分子を標的とした創薬技術の開発が求められ、特にRNAは標的として興味深い生体分子である。例えばmRNAを標的とすることでタンパク質の発現を制御でき、またヒトゲノム解析で見出された非コードRNA(ncRNA)を標的とできれば、これらの機能解明と創薬標的としての可能性を探ることができる。このようなRNAの機能を阻害する技術として、RNA鎖を用いるRNA干渉法が代表的であるが、干渉RNA鎖が高分子であるがために、製造コストや化学的・生物学的安定性が医薬品への応用に問題となる。そこで研究費受給者は、低分子化合物でRNAを触媒的に分解し、生体機能を制御する技術の開発を提案した。 当該年度までの研究成果として、まずRNA模倣分子を合成し、これを用いるスクリーニング条件も確立することで化合物の活性評価を実現した。分子を設計・合成し、RNAモデル分子の分解活性を評価したところ、高活性な金属錯体化合物を複数見出すことに成功した。しかしながら、この錯体化合物はDNAに対しても分解活性を示すことが課題であった。21年度の研究では、見出した錯体の最適化を試みた。その結果、モデルRNA化合物ではなく実際のRNAの分解に成功し、さらなる分子設計によりDNAに対する分解活性を抑えた、RNAを選択的に分解する有用な錯体分子を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成には構造の類似したRNA/DNA選択性の担保が重要であったが、偶然にも有用な錯体分子を見出すことに成功した。 当初の予定としては、この工程に最低でも1年は必要になると想定していたが、半年ほどで達成することができた。 したがって概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAの選択的分解を達成できたため、次はRNA配列を選択的に認識し分解できる分子創製を検討する。 具体的には、見出した錯体に対しRNAの特定の配列に結合することが報告されている低分子化合物を結合させ配列を認識したRNA分解が実現可能かどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更があり研究が中断される時期が生じたこと、想定よりも効率的に研究が進行し、本年度の試薬代は最小限となった。しかしながら、次年度にはより高度な研究成果を得るための生物学的実験を計画している。従って高価な試薬やそのほか消耗品を購入する必要があるため、そこに30万円ほどを補填する予定である。 また、当初予定していた、学会などへの旅費が不要となり20万円ほどは余剰となった。次年度より現地開催の学会も見通しが立っていることから、その旅費に補填や、オンライン開催が拡充してきたことから、パソコンおよび周辺機器への利用に充てる予定である。
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