2021 Fiscal Year Research-status Report
褐色腐朽菌の結晶性セルロース分解におけるキー酵素の解明
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20K15568
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
梅澤 究 近畿大学, 農学部, 助教 (70802544)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 木材腐朽菌 / 褐色腐朽菌 / セルロース分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐色腐朽菌は針葉樹の主要な分解生物であり、木造建築物の腐朽被害および木質バイオマスの糖化技術への応用の観点から極めて重要な生物である。褐色腐朽菌は木材細胞壁の主成分であるセルロースを、非酵素的な酸化的分解反応により低分子化し、非晶性セルロース分解酵素により単糖にまで分解するという、二段階の反応で分解すると考えられてきた。しかし、本菌は他の糸状菌で知られる結晶性セルロース分解酵素を持たないことから、結晶性セルロースをどのように分解しているのか、その分解機構は明らかになっていない。近年、申請者らは褐色腐朽菌Gloeophyllum trabeumにおいて網羅的遺伝子発現解析から、ファミリー9溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO9)、ファミリー14 LPMO(LPMO14)、エクスパンシン様タンパク質の3種類の結晶性セルロース分解への関与が予想されるタンパク質の遺伝子が、木質基質により顕著に発現増加することを見いだした。本研究では、これら3種類のタンパク質の機能解析を行い、これらのタンパク質の褐色腐朽菌における結晶性セルロース分解への関与を明らかにすることを目指している。本年度は、これら3種類のタンパク質の遺伝子を酵母菌Pichia pastorisに導入し、組換えタンパク質として発現させた。エクスパンシン様タンパク質の機能解析から、本タンパク質の糖質結合能が明らかになってきた。次年度の詳細な機能解析により、これら3種のタンパク質の生理的な機能が明らかになることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LPMO9とLPMO14は十分量のタンパク質が得られていない。これらのタンパク質について現在、分泌シグナルの変更やコドン最適化によるタンパク質発現条件の検討を進めており、これによりこれらのタンパク質の大量発現が可能になると期待している。エクスパンシン様タンパク質の機能解析においては、セルラーゼ活性の促進作用と糖質結合能についての調査を進めており、数種の多糖に対する結合能を有することが明らかになった。次年度はこれらのタンパク質の詳細な機能解析を行い、計画の遅れを取り戻せるよう努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はLPMO9およびLPMO14について、タンパク質発現条件の検討により十分量の精製酵素を得る。得られたこれらの酵素と、すでに精製タンパク質の得られているエクスパンシン様タンパク質について、酵素活性の基質特異性や、セルラーゼとの相互作用を含めた詳細な機能解析を行っていく。これによって得られた知見を学術論文として発表する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度行う予定であった実験が次年度にずれたために繰り越し予算が生じた。この予算を用いて次年度に当該実験に使用する試薬を購入する予定である。
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