2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K15629
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
堀部 貴紀 中部大学, 応用生物学部, 講師 (30757943)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サボテン / 遺伝子組換え / 重金属耐性 / メタボローム解析 / 水耕栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
サボテンは耐乾性や高温耐性など多様な環境ストレス耐性と健康機能性を併せ持っており、食品としてのみならず、過酷な環境に適応するモデル植物としても大きなポテンシャルを有している。本研究は、サボテンの持つ未知の環境ストレス耐性機構を解明し、さらにその性質を利用した新規栽培法を確立することを目的としている。当該年度は、(1)遺伝子組換え技術の確立、(2)代謝産物の動態解析、(3)機能性を高める栽培法の検討、などに取り組んだ。 (1)に関しては、高発現プロモーター(CaMV 35S)の下流にIntron-GUS遺伝子を接続したバイナリーベクターを持つアグロバクテリウムを使用し、ウチワサボテンの形質転換に成功した。しかし再分化効率が非常に低いため、カルスからの再分化を必要としない遺伝子組換え法の適応を検討している。(2)に関しては、サボテンの茎節が非常に多くの多糖類を含むため解析が困難であったが、抽出法を改善して成分をメタボローム解析し、クエン酸等の有機酸や糖、アラントイン、ケンフェロールを含む150種以上の代謝物を同定した。(3)に関しては、亜鉛・鉄・カルシウム・マグネシウム含量を高めた高機能性食用サボテンの栽培技術の確立を目指した実験を行った。具体的には葉状茎をそれぞれの重金属を含む培養液にて水耕栽培し、娘茎節の生育速度・収量・ミネラル含量に与える影響を調べた。その結果、亜鉛および鉄処理区において可食部に高濃度の蓄積が確認された。特に根における蓄積量は非常に高く、蓄積濃度は亜鉛と鉄のハイパーアキュムレーターの基準(亜鉛:3,000 mg/kgDW、鉄:10,000 mg/kgDW)を大きく上回っていた。本実験により、水耕液の組成改変により可食部の栄養成分量の強化が可能であること、ウチワサボテンが非常に高い重金属蓄積能力を有する事が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの感染拡大により教員・学生の大学への入構制限等が行われ、当初予定していた計画の実施が困難になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度積み残した実験について次年度の前半に取り組むよう研究を計画している。 本年度の実験により、サボテンが非常に高い重金属耐性を有する事が明らかとなった。サボテンは皮層や髄に発達した貯水組織を有しており、この中に吸収された重金属を隔離し蓄積していると推測している。亜鉛・鉄・カドミウム等の組織・細胞レベルでの分布を蛍光 X 線分析により調べる。さらに、それぞれの重金属輸送体のmRNAレベルでの発現変動を組織別に明らかにし、重金属耐性の発現機構を考察する。代謝産物の成分解析に関しては、新規あるいは特徴的化合物を抽出同定し、生育段階、組織、栽培方法(水耕栽培と土耕栽培)による動態を明らかにする。遺伝子組換え法の確立に関しては、パーティクルボンバードメント法やアグロインフィルトレーション法など、再分化を必要としない形質転換手法の適応を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により大学への教員・学生の入構が制限され、実験を実施する時間そのものが減ってしまい、当初の予定通りに研究計画を実施することが困難となり、消耗品費や委託解析費用が当初の予定より減少した。また参加を予定していた学会や研究打ち合わせが延期になり、旅費を繰り越すことになった。
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Research Products
(8 results)