2023 Fiscal Year Research-status Report
マウスNC系統の特性を利用した脳マラリア発症に必須な遺伝的要因の特定
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20K15698
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮坂 勇輝 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (30778098)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | NCマウス / 脳マラリア / ネズミマラリア原虫 / 遺伝子 / TXNIP |
Outline of Annual Research Achievements |
ネズミマラリア原虫(P. berghei ANKA株)に感染したマウスB6とCBA系統は脳マラリアモデルとして汎用されている。研究代表者らは新たにマウスNC系統が脳マラリアを発症することに加え、既知の複数の脳マラリア発症因子を持っていないことを見出した。本研究ではこのNC系統を加えた脳マラリア感受性を示す3系統の発症に共通して関与する宿主遺伝子を特定することを目的とした。これまでに、これら3系統の脳マラリア発症時の脳のマイクロアレイ解析より、共通して2倍以上発現上昇する55種の遺伝子を見出した。前年度はそれら遺伝子のうち脳マラリアの発症に伴って発現が10倍近く増加し、発症との関係性が明らかとなっていない抗酸化機能抑制因子TXNIPに注目し、B6とNC系統で欠損マウスを作製した。本年度は両欠損マウスの脳マラリアの感受性解析を実施した。P. berghei ANKA株感染6日後の血虫率は、B6系統(7.81±2.12%)とB6-TXNIP欠損マウス(6.49±1.91%)間、NC系統(9.84±1.72%)とNC-TXNIP欠損マウス(9.94±2.75%)間で有意差はなく、TXNIPの欠損がマラリア原虫の増殖効率に影響しないと考えられた。そのうえで、B6系統(7.50±0.53日)とB6-TXNIP欠損マウス(7.88±0.35日)間、NC系統(8.13±0.35日)とNC-TXNIP欠損マウス(7.83±0.39日)間の平均生存日数に差は認められなかった。さらに、両欠損マウスとも野生型マウスとほぼ同時期(感染7~9日後)に脳マラリア特有の神経症状を呈して死亡した。したがって、TXNIPは脳マラリアの発症に直接的に関与していないと考えられ、脳マラリア発症時に認められた遺伝子発現量の増加は脳マラリア発症後の2次的現象である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り3系統の脳マラリア発症時の脳のマイクロアレイ解析を実施し、共通して発現上昇する55種の遺伝子を見出した。さらに、脳マラリアの発症候補因子として注目したTXNIPの欠損マウスをB6とNCの両系統で樹立し、その脳マラリア感受性を調査することができた。しかし、予想に反してTXNIPは脳マラリアの発症に直接関与していないことが明らかとなったため、別の遺伝子について再検討する必要が生じた。したがって、研究は当初の想定より少し遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
3系統の脳マラリア発症時の脳で共通して発現上昇する55種の遺伝子のうち、既に脳マラリアの発症との関係性がノックアウトマウスの解析により検証されている遺伝子(Igtp, Cxcl10, Gzmb, Ilgp1, Tap1, Nkg7, Trim21, Tlr7, Homx1)と本研究で解析したTxnipを除いた45種の遺伝子から脳マラリアの発症に共通して関与する宿主遺伝子を再度探索する。具体的には新たに脳マラリア抵抗性系統(BALB/c)のP. berghei ANKA株時の脳由来のRNAを抽出し、脳マラリア感受性を示す3系統との遺伝子発現量をqRT-PCR法により比較することで候補遺伝子の更なる絞り込みを行う。有力な候補遺伝子についてはゲノム編集技術により欠損マウスの作製を検討する。
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Causes of Carryover |
P. berghei ANKA株に感染したTXNIP欠損マウスは野生型マウスと同時期に脳マラリア特有の表現型を呈し、全ての個体が死亡した。したがって、TXNIPが脳マラリアの発症に直接関与していないことは明らかであり、当初予定していた欠損マウスの詳細な表現型解析には至らなかったため、次年度使用額が生じた。本年度の未使用額は新たな候補遺伝子を絞り込むために必要な試薬類・消耗品類等の購入に充てる。
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