2020 Fiscal Year Research-status Report
筋収縮関連遺伝子群を利用した上皮組織の厚み制御機構の研究
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20K15802
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸 裕介 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (40738481)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 眼組織 / オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、筋収縮関連遺伝子群の発現制御機構を調べるために、Tagln遺伝子の蛍光レポーターES細胞から作製した眼組織オルガノイドを用いて、ChIP-seqの条件検討を試みた。しかしながら、オルガノイドから得られる細胞の量が十分でなく、抗体濃度などの条件検討を予定通りに進めることができなかった。一方で、より微量の細胞から次世代シーケンス用のライブラリーを調整することが可能なATAC-seqのキットを用いることにより、レポーターを発現する眼組織の細胞からATAC-seq用のサンプルを得ることができた。現在、解析に必要なサンプルの追加採取を計画し、用意を進めている。 ChIP-seq、ATAC-seqのためのサンプル調製の実験と並行して、Taglnレポーター細胞から作製した眼組織オルガノイドに対して種々のシグナルのアゴニスト・アンタゴニストを転嫁することにより、筋収縮関連遺伝子群の発現を制御する上流シグナルについて検討をおこなった。本年度は、神経堤細胞においてTaglnの上流として知られているPDGFおよびPTENシグナルに狙いを定め、それらのシグナルのアゴニスト・アンタゴニストの添加実験を中心に実験を進めた。しかしながら、それらの中にはレポーター発現に顕著な違いをもたらす因子を同定することはできなかった。しかし、アクチンをダイマー状に分解するSwinholide Aでオルガノイドを処理した際に、眼組織オルガノイドの中で将来RPEに分化する組織辺縁部分でのみ、Taglnレポーターの発現が強く活性化されることを確認した。この結果から、眼組織のうち、RPEに分化する領域としない領域において、筋収縮関連遺伝子のひとつであるTagln遺伝子近傍のクロマチンの状態が変化していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、マウスES細胞由来の眼組織オルガノイドを用いて、眼組織の分化過程で一過的に発現する筋収縮関連遺伝子の上流制御因子を探索する予定であった。しかしながら、眼組織オルガノイドの分化に必要な試薬のロットが年度途中で変更となった際、ロット差の影響によりオルガノイドの分化効率がこれまでと比べ低下してしまった。そのため、ChIP-seqおよびATAC-seq用のライブラリーの調製を思うように進めることができなかった。当該の試薬については現在、新型コロナウイルスによる流通の変化などにより、国内にあるロットが限られている状態であるが、今後、それらの中で最も分化に適したものを検討し、次年度以降の実験に使用していきたいと考えている。各種のアゴニスト・アンタゴニストの添加による筋収縮関連遺伝子の上流シグナル探索においては、決定的な上流シグナルを同定することはできなかったものの、眼組織のうち、RPEに分化する組織辺縁部においてTaglnを発現できる状態に細胞が変化していることを示唆するデータを得ることができ、一定の進捗があったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、筋収縮遺伝子群の上流の制御因子を同定するために、眼組織オルガノイドからATAC-seqでの解析に必要な残りのサンプルを追加で採取する予定である。しかしながら、その前に、オルガノイドの分化に必要な試薬について、ロットの検討を行う必要がある。万が一、分化に適したロットが得られない場合は、オルガノイドの代わりに実際のマウス胚の眼組織を用いて代替的な実験を行うことを検討する。同様に、試薬処理による筋収縮関連遺伝子群の上流シグナルの探索実験についても、試薬のロット検討によりオルガノイドの分化誘導効率が向上しなかった場合、マウス胚から採取した眼組織の器官培養をモデル系として実験を進めることを検討する。なお、これまでの研究の過程で、眼組織の器官培養系においても筋収縮関連遺伝子が発現し、ROCK阻害剤による処理を行うことでその発現が影響を受けることを示唆する結果を得ている。上記の実験の経過に合わせて、SRFの眼組織特異的ノックアウトマウスの作製についても進めていく予定である。
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