2020 Fiscal Year Research-status Report
Epitranscript transfer, a totipotency regulation operated by repetitive genes
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20K15808
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小林 美栄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00748337)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Refee / 全能性 / 初期胚 / RNA修飾 / エピトランスクリプト |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が独自に作製したRefee(Gm21312)に対するモノクローナル抗体を用いたRNA免疫沈降(iCLIP)によってRefeeはRNAと結合するタンパク質であることが実証された。また、Refeeに結合しているRNA配列の網羅的な探索にも成功した。この結果、RefeeはMERVL(マウス内在性レトロウイルス)やZscan4、自身のRNA(Refee RNA)に強く結合していた。さらに、これら標的RNAがどのように制御されるのかを検証するため、Venus蛍光タンパク質融合Refeeを薬剤で発現誘導できるES細胞を利用した。Refee発現誘導時には標的RNA遺伝子のタンパク質レベルが増加することがわかった。つまり、Refeeは特定のRNAに結合することでその翻訳レベルを促進している考えられた。 次に、相同遺伝子であるAlyrefの機能報告から、RefeeがmRNAのメチルシトシン修飾(m5C)を認識するか否かを検討した。ES細胞におけるRNA修飾様態やm5C修飾部位予測データベースを用いてRefee結合部位の修飾レベルを予測したが、どれも低い結果であった。他のRNA修飾であるメチルアデノシン修飾(m6A)についても同様に検討した結果、一部のRefee結合部位はm6A修飾されている可能性が高いことがわかった。 最後に、in vivoにおけるRefeeの機能インパクトを検討するため、マウス受精卵のRefeeをアンチセンスオリゴによりノックダウンする実験を行なった。この結果、ノックダウン胚では胚発生が全能性期(2細胞期から4細胞期)で停止してしまうことを見出した。つまりRefeeが全能性期胚に必須な因子であることを示唆しており、本研究でRefeeによる全能性制御機序を解き明かすことへの重要性が支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初RefeeがRNA上のm5C修飾を認識し、RNA特異的な核外輸送を担っていると予想していたが、iCLIPの結果ではそのような可能性が低いとわかり、予定していたm5C RNAに関する解析を諦めた。一方で、MERVLやZscan4といった代表的な2C遺伝子(全能性期に特異的に発現する遺伝子)産物をRefeeが認識しており、それらの翻訳レベルを促進していると示唆された。特にZscan4は様々な遺伝子の転写因子であることから(Zang et al. NAR, 2019)、RefeeはZscan4の下流遺伝子の発現に間接的に影響を及ぼしていると期待できる。さらにRefee結合部位がZscan4 RNAのm6A修飾部位と重複していることから、依然としてRefeeがエピトランスクリプト(化学修飾された転写産物)を認識することが期待された。 さらに、当該年度はアンチセンスオリゴによる初期胚のノックダウン法を確立することができた。この技術を用いて初期胚のRefeeをノックダウンした結果、胚発生が全能性期で停止してしまうことがわかり、Refeeの全能性制御における重要性が見込まれた。 緊急事態宣言によって研究活動が行えない時期があったが、概して本研究遂行に対する重みを見出すことができたため、以上のような評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
Refeeノックダウン胚が胚発生を停止する理由を追求するため、本胚やRefeeをノックダウンした全能性期様ES細胞のトランスクリプトーム解析を行う。さらに、RefeeノックダウンによってRefee結合RNAの翻訳レベルや核外輸送レベルが減少するのかを調べ、前年度に確認できた結果の裏付けをとって行く。また、RefeeによるRNA認識メカニズムを追う。iCLIP-Seqの結果を踏まえ、RefeeがRNAのm6A修飾を認識しているのかをゲルシフトアッセイなどを用いて解析する。m6A修飾RNAの制御システムに関しては近年徐々に明らかになってきている。また、m6A修飾酵素を欠損したマウスは胚性致死になることが報告されている(Geula et al. Science, 2015)。この修飾はすでにYTHDファミリータンパク質によって認識され、認識因子に応じてRNAがどのように制御されるかが異なってくる。YTHDファミリータンパク質の発現レベルは発生段階を通してほぼ一定であることから、全能性期特異的に発現するRefeeがm6A RNAに対する全能性期特異的なレギュレーターとなっているのかもしれない。ゲルシフトアッセイの結果によっては、全能性期胚のm6A修飾様態を網羅的に調べることを予定している。 以上の結果を踏まえて、Refeeがなぜ全能性期胚の発生に必須であるかを明らかにする。必要に応じてさらなる解析を行う。最終年度である令和3年度は、研究成果をオンライン学術集会などで積極的に発表していきたい。
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